資産価値の向上、住空間の質的向上にも注力した第2回目の大規模修繕工事:2011年7月号掲載
マンション概要
Gマンションは、2棟、498戸からなる郊外型の大規模マンションである。今回の工事は新築後28年目に実施した第2回目の大規模修繕工事であるが、管理組合では資産価値の向上や居住者の定住化を見据え、様々な環境改善工事を実施した。
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メインエントランス(改修後)
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(改修前)
工事の準備
大規模修繕工事に付帯する環境改善工事というと、高齢者に目を向けたバリアフリー化など、機能としての改善工事を想像することが多い。しかし、マンションの高経年化を勘案すると、資産価値の向上や、これからの時代を背負う若い世代に目を向けた住空間の質的改善など、広義の改善工事も重要になる。ガーデンシティ狭山ではこれらのことを踏まえ、バリアフリー化などの機能改善はもちろんのこと、住空間の質的改善も積極的に検討することになった。
そこで工事の計画段階では、居住者特性、現在の生活に対する要望、将来望む住環境の様態など、管理組合主導の下で「暮らし」に関わるソフト面の詳細なアンケート調査を実施し、綿密な情報収集を行うことから始まった。
環境改善工事
アンケート調査の結果を基に様々な議論がなされ、外構廻りを中心に大規模な改善工事が実施されることになった。 敷地のメインエントランス廻りにあっては、消防車・はしご車などの大型緊急車輌が通れない既存植栽アーチを撤去し、モダンなエントランスに改装した。また、敷地内全体の空間整備を視野に、メインエントランスにあわせて各サブエントランス廻りも改装し、各エントランスを結ぶゴムチップ舗装の遊歩道を新設した。住棟のエントランスホールにあっては手動の開き扉をオートドアー化すると共に、近年新築されたマンションにも見劣
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サブエントランス(改修後)
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(改修前)
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(改修前)
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管理室前(改修後)
りしない空間造りを心がけた。その他、段差のスロープ化、手摺の取り付け、照明のLED化、ピロティ空間の改善など、機能とデザインの両立を目指した多数の環境改善工事を実施した。
おわりに
マンションの大規模修繕工事とは、従来、外壁等の「修繕」という概念であった。しかし、各地でマンションの高経年化 が進んでいる今、大規模修繕工事は単なる「修繕」という概念から一歩踏み出し、「改善」に転換していく必要がある。これまでにも、各マンションで様々な改善工事が実施されてきているが、今回の工事はさらに大きな一歩を踏み出せたと言える。
現実的な問題として建替えが困難なマンションが多い中、マンションの超長期的な保全手法の検討は社会的な課題になっている。
住空間の再整備を試みたGマンションの改善工事は、従前の長期修繕を超えた超長期的なマンション保全手法における大きなヒントになるのではないかと考える。
「設計・監理=株式会社スペースユニオン、施工=建装工業株式会社」
<アメニティ新聞346号 2011年7月掲載記事>