団地型陸屋根の屋上防水全面改修工事 旧耐震基準のため軽い断熱材に:2012年9月号掲載

1、工事概要

 旧公団分譲・RC造5階建、40棟・1530戸、入居昭和43年(43年経過)、団地型集合住宅に於ける屋上防水全面改修と同時施工の屋上断熱化工事の事例を報告します。当工事に関する「断熱材の選定」「防水工法・断熱工法」については本紙5月号「工事事例<その1>」に記載してあります。工事は防水専業施工会社1社によるもので、工期は7カ月間です。

2、旧防水層の状況

 旧公団による建設時の屋上防水は〝熱アスファルト防水(アルハンプルーフィング)〟施工で、花見川に於いては、2年後位から約40%の建物から雨漏りが発生したと報告されています。

 旧公団瑕疵工事として南海工業による〝日本合成ゴムのハルコート防水〟が施工されました。
漏水が止まり、保証期限後は管理組合の修繕計画により、ハルコート防水の部分補修並びに全面塗布改修を実施してきました。旧防水層の状況は、漏水は皆無であったが、度重なる塗布防水の部分補修により、防水層表面は不陸が激しい状況となっていた。

施工後

3、計画修繕

 管理組合では、H住宅建物の共用期限を入居80年までと設定して修繕計画を策定している。今回の防水改修工事に於いて工事用足場設置をせずに、周囲スタンション(安全柵)設置による安全対策と飛散防止養生として仮設工事費用の削減をはかれたのは、5年前に実施した「第3回大規模修繕工事」に於いて、今回の防水改修工事を見越して、施工に足場を必要とする屋上外周大庇部分の防水改修工事を先行工事として、今回と同仕様にて実施した事に依ります。

 また、屋上防水に関しては供用期間の残期間から最低1回の全面改修が必要となる。よって、今回の改修仕様は、次回の改修工事費用が低減できる仕様とした。

施工前

断熱材貼りアンカー打ち

4、防水工法と断熱

工法の選定経緯

(1)建物は築後43年以上経過しており、旧耐震基準の構造でもある為に、屋上防水改修における防水工法や断熱材の選定に当っては、出来るだけ積載荷重を少なくする。
断熱材単位重量例/硬質ウレタン系フォーム厚35mm=10kg/m2、断熱ブロック(RBブロック)=44kg/m2
(2)既存の露出防水層(ハルコート=ゴムアスファルト系塗膜防水)表面は、度重なる部分補修により凹凸が激しく、適正な水勾配を確保して新規防水層を直貼り施工する為には、高額な下地処理費用が必要となる。そこで、断熱ボードを敷き込み平滑な防水下地を新設することで、下地処理費用を大幅に軽減する。
(3)下地処理をせずに断熱ボードを敷き込む為に、断熱材は接着ではなく機械固定とする。
(4)入居後80年迄の建物供用計画により、今回改修後18年~20年に最終の全面改修予定となる為に、次回改修費用がなるべく軽減出来る様に、今回の改修は露出防水工法を採用する。
因みに、次回の改修工法は、砂付ルーフィング1層増し貼り工法を予定する。
(5)露出防水層の保護塗装は〝遮熱塗料〟とする。防水層保護のための中間塗り替え周期は、通常保護塗料が5、6年のところ、遮熱塗料では8、9年が想定される為、次回改修までの中間塗り替えは1回となる。また〝遮熱塗料〟を使用する事により、防水層保護の強化と遮熱による断熱材と合せて断熱効果の強化が期待できる。

(一級建築士事務所 秋設計 代表 秋葉義廣)

(2012年9月号掲載)