排水設備改修工事 設備更新の必要性を繰り返し説明:2014年7月号掲載

立地と建物概要

 M住宅は京急線の弘明寺からバスで10分の横浜市南区の丘の上の丘陵に建設され、西を向くと富士山が望め、東を向くと港みらいの花火やランドマークタワーが視界に入る高層住宅です。

 入居が1974年、現在築41年目の10階建て2棟、11階建て2棟、14階建て2棟の計6棟1035戸の団地です。住戸タイプは3タイプ。10階・14階建て955戸の水場周りは1タイプ(反転タイプあり)、11階建て80戸は2タイプ(反転あり)の計3住戸タイプで構成された団地です。

設計事務所との関わり

 関東学院の田邊先生が組合の依頼で策定した1998年の第4回長期修繕計画の見直しの設備を担当し、その後2004年の第5回、2009年の第6回の見直し策定のお手伝いを行い、2010年7月から給水場改修設計を、工事監理を2012年1月まで、引き続き今回の「雑排水・汚水設備改修工事」改修設計業務を2012年6月から、設計監理を2013年4月から2014年6月の完了まで受託しています。

排水設備改修の経緯

 1995年(築21年目)に、配管用炭素鋼管の分岐継手からの漏水が多くなり、1~5号棟台所系排水立て管分岐継手部の排水用メカニカル継手への変換修繕と専有枝管の樹脂管(硬質ポリ塩化ビニル管)化および住戸内床下横主管の、6・7号棟立て管と専有枝管の樹脂管(硬質ポリ塩化ビニル管)化および立て管の屋外位置替え工事を行いました。

 2011年に、排水管の内視鏡調査で1階床下横主管の住戸内から屋外排水桝までの未改修埋設排水管部で、管内部に腐食等不具合が発見され、1~5号棟の1階床下未改修雑排水管と汚水排水横主管の更新を行いました。

 その後の洗面所系と台所系の未改修排水管からの漏水や不具合及び経年劣化から、今回の改修工事を行うことになったのです。

今回の雑排水・汚水設備改修工事の特徴

(1)浴室防水の劣化対応:ユニットバス導入住戸の床上接続化、ユニットバス化しない住戸の浴室排水金物のエポキシ樹脂塗布延命化と下階天井横引き排水枝管の耐火パイプ(樹脂管)更新、将来用ユニットバス化対応スラブ上排水接続管の配管を行った。
(2)洗面器排水のスラブ上化配管を行った。
(3)浴室にホースで排水していた洗濯機排水漏水対応を、洗濯機パンの新設と洗濯排水枝管の新設スラブ上配管で行った。
(4)台所排水立て管と通気立て管、浴室・洗面系立て管と通気立て管、汚水立て管の5本の立て管を特殊継手排水方式に変換して、浴室・洗面・洗濯・汚水系排水立て管と台所系排水立て管の2本の立て管に集約を行った。中間階では逃がし通気立て管が浴室と便所にそれぞれ立っていて合計7本の立て管があった住戸もあった。
(5)洗面所と便所の下がった床を、廊下の床と合わせてバリアフリー化を行った。
(6)台所系はパイプシャフト内に配管されていたが、浴室系と便所汚水系は洗面所・便所に露出されていたので、6・7号棟を除き便所に特殊排水継手で集約した浴室系・便所汚水系立て管を囲い排水管を見えなくすると共に掃除ができない箇所をなくし且つ消音性能を高めた。

洗面所改修後/排水立管無し、洗面台と洗濯機入れ替え設置 洗面所改修後/排水立管無し、洗面台と洗濯機入れ替え設置

便所改修後/排水立管隠蔽、便器位置少し移動 便所改修後/排水立管隠蔽、便器位置少し移動

排水管の傷み 排水管の傷み

居住者に改修工事が必要であることの周知・ 理解・了解

 今回の工事は、住戸内にある設備配管の取替工事ですので、住戸内立入工事となるため「改修工事が必要であること」「改修工事の内容について」「ご協力やお願い事項について」など、居住者への周知・理解・協力が不可欠な工事ですので、集会所で設計説明会を12回、工事着手説明会を12回、住戸内立入工事説明会を36回行うだけでなく事前全戸調査時には個別説明を行った。

工事会社選定

 見積参加者を組合で会社概要・実績他を検討チェックし7社を指名し、見積依頼を行ったが、1社が辞退したため6社での見積合わせを行い、ヒアリング3社で最終選考を行ったのち、選定会議で工事業者を川本工業株式会社に決定した。

工事等

 全体工期は、2013年3月15日~2014年6月30日、実施工期は、2013年9月1日~6月5日で工事を行った。工事着手説明会後に仮設物設置と全戸調査と先行工事を行い、確定した住戸内立入工事日程で住戸内立入工事説明会を行った。立入工事説明会は実施工事期間が長いため、各住戸系統工事着手の約1カ月前に開催したため説明回数が多くなった。

 住戸内立入工事期間は6日+予備日の7日間、14階建ては1立て系統を4ブロックに分けて行ったため1立て系統の完了は実働10日間(日祭日休み)、1~5号棟は2班体制で、6・7号棟は別班の3班で多い時は川本工業の社員12名、作業員90人程が工事を行った。また、場外に通勤車両の駐車場を確保して作業の障害にならないよう配慮した。昨年から今年にかけての大雨や大雪などの天候や、居住者不在住戸の影響で工事の遅延もあったが、大過なく工事を終わらせることが出来た。

(有限会社トム設備設計 町田 信男)

2014年7月号掲載