1回目の大規模修繕工事 屋上緑化を撤去:2015年8月号掲載
当建物は、都心の繁華街の近くであるが、戸山公園や都営アパートに面した緑豊かな環境に建つ145戸の都市型マンションである。
建物中央に吹抜があり、6階から上階はセットバックして各階が共用植込に接したルーフバルコニーがある建物である。
管理規約改定のコンサルティングを行っていたことをきっかけに、築11年を過ぎたところで、大規模修繕を実施することになった。
工事中、春の長雨による工程の遅れが若干あったが、約5か月の計画工事期間内で完成した。
◆屋上緑化による防水不具合
屋上は、緑化により四周の排水溝を除きほぼ全面に芝や雑草などの植物が繁殖していて、防水材の劣化が懸念されていた。植物を撤去したところ、耐根処理が不十分であったためか、根が表層の防水層に入り込んで、下部の断熱材が水分を含んでいる状態であった。断熱性能の低下を考慮し、既存の断熱材を撤去して、断熱材の厚さを50mmにした断熱アスファルト防水工法により、防水の全面更新を行った。
◆共用部花壇の植栽撤去
セットバック部の屋根に花壇があり、植栽されていた。花壇の下階は居室になっているため、花壇内の防水材の維持保全が必要であった。
また、屋根部の花壇は専有部分からでないと、剪定等のメンテナンスができず、住民の協力が前提で手間と費用がかかることから、植栽を撤去することになり、併せて花壇内部の防水更新を行った。撤去した植栽は復旧しないため、脱着可能な黒色ネットで花壇上部を覆い、花壇内にゴミや私物等が入らないような対策を施した。
◆ルーフバルコニーの防水更新
ルーフバルコニーは、断熱塩ビシート防水の上にウッドデッキが敷きこまれ、一部には花壇や坪庭が設置されていた。排水溝が花壇内部を通過していることから、排水不良をおこして、漏水事故をおこしたことがあった。そこで、花壇や坪庭を撤去して、ルーフバルコニーの防水更新を行うことになった。
ウッドデッキを撤去したところ、塩ビシート防水材の傷もあり、一部で防水層の下に蓄水が確認された。既存の塩ビシートの傷や浮き部を補修し、硬質ウレタン塗膜防水材で防水更新を行い、長尺塩ビシートを張ることとした。
◆屋根材の落下防止対策
屋上やセットバック部の勾配屋根は、天然石の玄昌石で葺かれていた。石材のひび割れや欠損が各所に確認された。割れた屋根材が落下した場合は、居住者や隣接する道路の歩行者に被害を及ぼしかねない。
通常近寄ることができない屋根材を頻繁に補修することが不可能なため、落下した場合に被害が出そうな範囲の屋根を黒色ゴルフネットで覆い、割れ落ちた屋根材が地上部に落ちないような対策を行った。
(設計・監理=鈴木哲夫設計事務所、施工=建設塗装工業株式会社)
(2015年8月号掲載)