責任施工の大規模修繕工事 設計コンサルはセカンドオピニオンの役割:2015年10月号掲載
このマンションは、第二次マンションブーム後期に建てられた高経年マンションである。これまで維持保全をそれなりに実施してきたが、不具合をもたらす根本的な改良を行っていなかったため、建物の劣化が烈しく積み残された改善処理が多岐にわたる工事となった。
本件の大規模修繕工事を推進するきっかけは、行政の主催するマンション管理セミナーで総合的なアドバイザーとして専門家の活用法があることに興味を示された聴講者の相談からはじまった。
【採用した当マンションの大規模修繕工事の進め方】
通常設計コンサルタントは、設計監理を生業として業務対応するが、管理組合は、修繕工事を推進する上で必要な考え方や方法を検討した結果、設計コンサルタントを選定する時間的余裕がないことから建物診断から工事完了までの全てを施工会社に依頼することを選択し、弊社は大規模修繕のナビゲーターとして関わることになりセカンドオピニオンの役割を担ったもの。施工会社の選定方針は、検討の結果以下とした。
(1)施工会社に責任施工としてすべてを依頼し、必要に応じて弊社はアドバイスする。
(2)公募の中から施工会社等を数社選定し、建物診断に基づき実施すべき修繕工事項目の内容や概算工事費を提案してもらう。
(3)管理組合の要望する修繕項目を検討してもらい、各社の提案力を比較検討する。
【責任施工会社選定の方法】
プレゼンテーションまでにかかる費用は、参加会社の負担として各社の提案を受け、管理組合の要望する工事項目の組み込み内容や概算工事費の比較を行い、最もふさわしい提案をした施工会社を選定することとしていた。
各社の見積内容は自由であることから当然ながら工事費を比較すると安いところに目が向くのであるが、工事項目の抜け落ちや提案内容に差異があり、単純には比較できない。
共通する工事項目と管理組合が要望した工事項目を比較表に整理してみると、必ずしも安いところがふさわしい提案内容とは限らないことが分かった。
【改修工事の経緯と概要】
管理組合は、プロポーザルを経て最終選考した会社に工事項目の再検討を行い見積修正を行って契約した。
必須項目は、外壁改修と塗装や防水のほか、住民の要望が多い優先度の高い項目をオプション工事と位置づけ、工事中に予算配分しながら実施する項目を決定していった。そのため、工程管理が大変だったようだ。
特に高経年した建物で、最近の建物と造り方が大きく異なり、外壁の一部にラスモルタル塗り(写真1)の多用や外壁モルタルの多層塗り(写真2)のほか、モルタル層内に広がる漏水形跡(写真3)など意外な施工法を取っていたことが分かり、改修処理が一筋縄では通用せず、随分勉強になった。
【改修ナビゲーター=(有)鈴木哲夫設計事務所、施工=(株)フォルス】
(2015年10月号掲載)