設計・監理方式による大規模修繕工事 外壁の色彩を居住者とともに決定:2016年9月号掲載
1.建物概要
B住宅は、東京農大の近くで、世田谷通り沿いに位置する緑豊かで交通の便が良い環境にあるマンションです。昭和39年竣工・鉄筋コンクリート造・地上6階建て・54戸のマンションで、建物は築50年を超えていますが、その当時としてはめずらしいメゾネット形式が取り入れられた魅力的な住戸内空間を持った建物です。また、1階の一部は店舗となっています。
2.管理組合の取り組み
2001年に行った前回の大規模修繕から12年が経過した2013年に、管理組合で大規模修繕工事の検討を始めました。工事の計画を進めていく途中で、設計事務所による設計・監理方式を取り入れることの検討を行い、2014年6月の総会決議を経て、改めて設計事務所の設計・監理による大規模修繕工事の計画がスタートしました。
3.調査・設計
まず、各種調査を行った上で、工事の基本計画を検討することから始めました。
今回の大規模修繕の課題は、①建物を維持していくために必要な工事と②管理組合が希望する改良工事を、洗い出し、優先順位を決め、今回必要な工事か先延ばししても良い工事かを整理することでした。
①の建物を維持していくために必要な工事の検討では、外壁の既存の塗装の全面剥離、屋根防水の全面改修は、調査結果から必要な工事としました。バルコニーのスチール手摺、共用部スチールサッシのアルミ化は、塗装の剥がれはあるが部材はまだしっかりしていることから先延ばしとして塗装の塗り替えを行うこととしました。
②の改良工事は、バルコニーの竪樋交換に伴い排水口を排水しやすい位置へ変更、屋外階段に排水溝・雨樋新設、エントランス裏口への自動ドア(折り戸)新設、集合郵便受けを大きいサイズに取替、屋外階段に補助手摺新設を行うことにしました。
4.色彩検討
外壁塗装を塗り替えるにあたり、外壁の色彩を変更することも検討しました。まず、居住者に建物の立面図を配布し、色彩の希望がある方には案を提出してもらい、その後、提出された案を参考にしながら、設計事務所と塗料メーカーのカラーコーディネーターで検討して4つの色彩案を作成しました。その案を委員会と打ち合わせた上で、居住者にアンケートをとり、多数決でモノクロームな配色の案に決定しました。修繕前の色(白と明るい茶色の組み合わせ)と大きく変わったことや、既存の塗装を剥がしたので色分けの境目をきれいに仕上げられたことで、修繕後の外観は一新し、とてもきれいになったと思います。
5.工事のスケジュール
工事は平成27年8月下旬~12月末で行われました。外壁面の既存塗装の剥離に想定よりも時間が掛かったこと及び外壁面のモルタルの浮きが多く、補修に相当な時間を要したことから、2ヶ月程工期が延びてしまいましたが、大きなトラブルもなく、無事に完了しました。
6.最後に
今回の工事が計画段階から工事完了までスムーズに進めることができたのは、委員会の方々が理事会への報告や広報などの様々なサポートをして頂いたこと、また居住者の工事への理解と協力の賜物と感謝する次第です。
(一級建築士事務所 八生設計事務所・鈴木 和弘)
(設計・監理=有限会社八生設計事務所、施工=株式会社リニューアルウィングス)
(2016年9月号掲載)