窓サッシの更新、玄関扉の更新等80年マンションを見据え快適な住環境を維持する大規模修繕工事(その2):2017年2月号掲載
80年マンションを目指すと決断した、築48年経過の「I団地」(27棟768戸、付属棟5棟)の長期修繕計画策定から始まり、今回工事の設計・監理業務を受託するにあたり、当センターではまず次のことに注力した。
今回実施した改修工事の命題は今後30年以上に亘り快適・安心・安全な住環境を整備すること。
限られた予算の範囲内で、命題をクリアするためのポイントを定め改修・改善設計を行うこと。
ポイントは次の7点を掲げた。(1)下地補修工事(2)防水・シーリング工事(3)色彩計画(4)窓サッシの更新工事(5)玄関扉の更新工事(6)共用部照明の更新工事(7)郵便受け更新工事。
(1)下地補修工事
脆弱塗膜の除去、モルタル浮きの補修、爆裂部位の拡大補修、等を徹底した(今後30年以上に亘り建物を健全に維持するために重要と判断し)。
2棟に於いてバルコニー上裏から多量の木片が確認され全て除去した、よって予想外の時間と費用が費やされた。
木片は新築時のセパレーターと考えられ、残置したままモルタルで隠蔽したと推察した。
(2)防水・シーリング工事
屋上防水は保証期間中であるため、保護塗装に留めた。階段・踊り場は近年に長尺シート防水工事を実施してあるので対象外とした。
バルコニー床・大庇・小庇・面台はウレタン塗膜防水を施した。開口部シーリングは窓サッシ更新前に、既存撤去・新規打替えを実施した。
(3)色彩計画
千葉市には景観条例があり、「まち」「さと」「うみ」の3パターンが定められており、当団地は「うみ」の景観ゾーンに当たる。
「海と空の広がりを確保する」「海と空の開放感を阻害しない壁面の工夫」等の諸条件を満たす要素として、色相・明度・彩度などの制約をクリアーすることが必須であった。専門のデザイナーに依頼し6パターンの色彩シミュレーションを作成し検討した。
作成した色彩シミュレーションを基に、現在居住する方々に違和感なく受け入れられ、かつ「若い方が新たに入居したくなるようなデザインを多くの居住者から意見を求め、独自のデザインを決定した。
(4)窓サッシの更新工事
更新はカバー工法。基本性能は初期性能を高く設定し永く快適な住環境を維持できる設定とした。
室内側ガラスの内側に特殊金属膜をコーティングした「断熱タイプ」とした。一般的には温暖な関東地域では「遮熱タイプ」を勧める場合が多いが、夏季の高い太陽光は長い庇に遮られ直射日光は余り多く室内に入らない、冬季は低い太陽光を十分室内に取り入れられ、室内の熱が逃げにくい「断熱タイプ」が最適とし選択した。
有効換気開口部面積は80平方センチメートル、気密性能の向上により十分な換気が必要と考えた。サービスバルコニーの勝手口ドアは網戸一体で窓ガラスが上下スライドする「通風タイプドア」を採用。
当団地にはエアコン・スリーブが無く、居住者は冷媒管を換気小窓を利用するなど苦労していた。
組合負担でエアコン・スリーブを1個所(サービスバルコニー有住戸は2個所)新設。
躯体強度を損なわないように最小数としたが、オプションでエアコンスリーブ付き袖FIX窓を選択することも可能とした。
(5)玄関扉の更新工事
更新はカバー工法(対震枠仕様)
基本性能は初期性能を高く設定し永く快適な住環境を維持できる設定とした。防犯性と高齢者に優しいプッシュプルグリップ方式を採用した。
風呂場が玄関に近いので、玄関にこもりがちな湿気や匂いを除去できる換気機能は、扉下部開口と室内側間で通気ができるようなシステムで、換気と防犯面を両立させた。
(6)共用部照明更新工事
既存は極シンプルな逆富士型蛍光灯であるが、蛍光灯の製造中止が間近となっていること、省エネに繋がることなどを考慮して器具一体型のLEDランプを採用した。
今回階段入口のグレードアップは見送ったが、掲示板や郵便受けなどの使いやすさと、ほっとする帰宅を演出できるよう既存の倍以上明るいLED照明に変更した。
(7)郵便受け更新工事
既存は1階住戸分がなくA4封筒が入らない縦型タイプであるが、A4封筒が横に入り鍵付きの郵便受けを全戸分設置した。
工事は、管理組合並びに居住者の方々の協力により工期内で無事完了した。ご協力ありがとうございました。
(NPO法人住管センター理事長・外池謙二郎)
(2017年2月号掲載)