2回目の大規模修繕工事/工事きっかけに「ちょこボラ」発足:2017年4月号掲載
大山おろしと呼ばれる丹沢の峰から吹き下ろす風が冷たい海老名市に「Kマンション」は立地している。相鉄本線の急行で横浜まで29分とアクセスはいい。居住者の方々はびっくりするほど仲がいい。夏祭り、餅つき大会、ゴルフコンペ、駅伝大会への参加など、抜群のコミュニティーがつくられている。
鉄骨鉄筋コンクリート造の11階建てで1棟だが、エキスパンションジョイントで西棟と中央棟と東棟に区分される。260戸の大所帯で1989年に建設された。住戸タイプは65㎡から110㎡までの20タイプとバラエティーに富んでいる。
2002年に第1回大規模修繕工事をおこない、2010年に中規模修繕工事、そして2016年から2017年にかけて第2回大規模修繕工事がおこなわれた。長期修繕計画に基づいて計画的に工事をおこなっているので良好な居住環境を保てている。第1回大規模修繕工事では屋上防水を完全に撤去して改質アスファルト防水を熱工法で3層重ねている。15年の漏水保証を得られており、今回はトップコートの塗布だけで済んでいる。
タイル張替え約10万枚
タイルの浮きは今回も大きなテーマで、実数精算工事で主たる増額要因となった。タイルのピンニング注入処理で9万穴、タイルの張り替えで10万枚近くを要している。共用廊下に面するサッシの面格子は緊急時に脱出できる機構の付いたものに取り替えて、二方向避難を確実に確保した。玄関ドアのドアクローザーは不具合部のみの取替えを予定していたが、結果的に全戸の取替えに踏み切った。東日本大震災で変形したエキスパンションジョイント金物も一部分を取り替えている。外構工事では車路や駐車場のアスファルト舗装をやり替えている。外部の駐車場を格安で借りて、構内を7工区に分けて、最大30台の車両を外部に移動して工事が完工できたのも、修繕委員会や理事会の卓越した交渉力と綿密な連絡体制に委ねられている。
植木鉢移動に「ちょこボラ」活躍
今回の工事にあわせて管理組合では、住民の悩みを解決することを目的とした「ちょこっとボランティア(通称:ちょこボラ)」が発足した。マンション住民が主体となるこのような取り組みは海老名市内では珍しく、地元のタウンニュースで紹介されている。
きっかけは工事のはじめにバルコニーの植木鉢などを仮置場まで移動するのに、高齢化が進んでいるので運べない人がいるのではとマンション内でボランティアを呼びかけた。この趣旨に賛同した21人が集まって「ちょこボラ」が誕生した。さっそく依頼を受けた世帯のバルコニーから植木鉢やプランターを台車で中庭の仮置場まで運んだ。「階段が多くて一人で運ぶのは大変なので、皆さんが手伝ってくれて助かりました」と感謝の言葉が寄せられている。ちょこボラの代表は、「高齢化が進む今、特に災害時には近所の助け合いが大切になる。ちょこボラで住民が互いに顔の見える関係を築いて、絆を深められたら」と語っている。
設計・監理=宮城設計一級建築士事務所
施工=株式会社ティーエスケー
(2017年4月号掲載)