第1回目の大規模修繕工事で屋根防水を全面更新:2017年9月号掲載
設計・監理/有限会社 鈴木哲夫設計事務所
福智千秋
当建物は、千葉県の幕張海浜地区に位置し、周辺には商業施設や集合住宅が立ち並ぶ283戸の郊外型マンションでL字型の建物である。築7年目に建物診断を行い、築10年を迎えたところで大規模修繕を実施することになった。年末年始を含む工事期間であったが、延べ7・5か月の計画期間内で工事を完了した。
◆屋根防水材の全面更新
各住棟の屋上は、最上階の各住戸にグルニエが設けられ、戸境部の梁が逆梁になっていて、立上り部やパラペットの量が一般の建物より多い形状になっているため、既存の露出アスファルト防水材に浮き膨れが多くできていた。
築10年での防水材の全面更新は、一般では早いように思われたが、部分的な補修では後の漏水事故等が懸念されたことから、複雑な形状にも対応でき、防水保証期間が15年と長期耐用の塩ビシート防水(機械的固定工法)による全面更新を行った。また、今後の修繕サイクルを考慮し、グルニエ屋根、エントランスホール屋根及び電気室屋根も同材料の防水材で更新した。
◆外壁タイルの状況
妻側外壁、セットバック部外壁及び開放廊下内の外壁は50二丁掛タイルの現場張り、PC製の外壁飾り壁は打ち込みタイルで施工されていた。地震被害によるタイルのひび割れは若干あったが、タイルの浮き補修の量は、一部打ち込みタイルではあるが、現場張りタイル部においても、一般的建物に比べ極めて少なかった。タイル伸縮目地の幅や厚さと配置、打ち継ぎ目地部や構造スリット部とタイル伸縮目地の一致した施工など、適切な新築時のタイルの張り方や施工配慮があれば、タイルは浮かないという実証事例である。
また、一部に特殊模様のタイルが使用されていたが、施工者が新築時の施工会社の関連会社であったことから、過去の履歴調査により同じタイルを調達することができたことは幸運であった。
◆ゴミ置場ドア等の改良
ゴミ置場の出入り口ドアは、サブエントランスからの通路に面して設置されており、不意に扉を開けたときに通行者に当たる危険性があったため、安全対策として内開きのガラス窓付扉(防火ドア認定品)に交換した。また、ゴミの量が増えると、搬出用の引き分けドアにゴミ袋が詰まり開かなくなることがあったため、ゴミ袋がドアに当たらないように戸袋を設置した。
◆廊下等照明器具のLED化
廊下やエレベーターホール等の照明は、常時点灯であり省エネ対策を行うこととした。また、電球交換が容易でないエントランスホールや装飾壁内の照明器具は、交換サイクルを長くしたいという観点から、これらを含めLED化することにした。
設計・監理=有限会社鈴木哲夫設計事務所
施工=株式会社長谷工リフォーム
協力会社=株式会社永和工業(建築・防水)、株式会社岩田架設工業(足場工事)
(2017年9月号掲載)