第3回大規模修繕工事でエントランスのバリアフリー化等グレードアップ改修:2017年12月号掲載

1.建物概要

 「Kハイツ」は東海道線大船駅から西北西に直線距離で約2キロメートルに位置し、県道312号線と402号線が交差する陸橋(関谷インターと呼ばれている)から徒歩2~3分の県道沿いに建っている。小高い山間で春はウグイスの声が秋には紅葉美が堪能できる自然豊かな住環境である。

 1981年に建設され経年36年になる鉄骨鉄筋コンクリート造地上8階建の総住戸数56戸のマンションである。

2.大規模修繕と耐震診断

 第3回大規模修繕工事の検討は、「大規模修繕委員会」を立ち上げ、構成する8名の委員と理事長とで進めていった。委員会では大規模修繕と共に耐震性能の確認が課題となり、耐震診断で耐震補強が必要になった場合は大規模修繕工事の修繕範囲が大きく異なってくる。このため、早急に耐震診断を行なわなければ大規模修繕工事の方針が決められないという結論に至り、耐震診断の勉強会を重ねる中、折しもタイミング良く鎌倉市で耐震診断に係る補助金交付制度が施行されたため、申請した結果鎌倉市第1号で採択され、補助金交付の元、耐震診断を行った。診断結果はIs値が全ての部位で0・6以上が確認され耐震補強工事は不要となった。

3.大規模修繕工事へ盛り込まれた改善工事

 この結果から管理組合修繕予算を大規模修繕に集約できる事を確認し、大規模修繕工事の方針を設計事務所と共に検討した。

 修繕内容は基本修繕としての外壁塗装、鉄部塗装、床防水改修・補修、シーリング取替、劣化金物補修・取替と共に36年間一度も改修していなかった屋根防水の高断熱防水への改修を行った。又、3回目の大規模修繕である事から、外壁塗膜の全面剥離の要否の確認結果、塗膜付着力が十分確保されていることから塗膜剥離は不要となり、改善工事をある程度盛り込むことが可能となった。

 改善工事としては「エントランス扉の自動ドア化」「エントランスホールのリニューアル」「玄関扉の対震ドアへの取替」「屋外鉄骨階段の消音床工事」などを行った。

 エントランスの自動ドア化はバリアフリ-と共に、手に荷物を持っての出入りが非常に楽になった。
エントランスホールのリニューアルは自動ドア化と共に内装を石調タイル貼りとし照明器具をLED化し最新マンションのイメージへ刷新した。

 玄関扉の対震ドアへの取替は、建物の耐震性能は確保されていても大地震で扉が変形すると閉じ込められる可能性がある懸念を解消した。

 屋外鉄骨階段の消音床工事は、長年、朝の新聞配達員のけたたましい階段を駆け下りる音に目を覚まさせられていたが、穏やかな朝を迎えられるようになった。

 これらの改善工事と共に外壁塗装色も、現代のカラーを取り入れたハイグレードな色彩とした。
 耐震診断から始まり、多くの改善工事を盛り込んだ第3回大規模修繕工事の成果は、居住者の満足度が非常に高かった。

鉄骨階段消音床

エントランス自動ドア

4.最後に

 これらの成果は、熱心な大規模修繕委員会の委員(ほぼ常駐監理をしてくれた委員もいた)の皆様のマンションへの思い入れが成した技である。又、多種な工事を1人で采配し居住者へも優しく対応した現場代理人のおかげでもある。

 尚、今回の工事で積み残された今後の課題に、勇んで取り組もうとしていた責任感の強い大規模修繕委員長が、工事完了引渡し2・5ヶ月後、持病により急逝されたのは非常に残念である。

設計・施工/有限会社八生設計事務所 山田 俊二

建物外観

設計・施工=有限会社八生設計事務所
施工=ヤシマ工業株式会社

(2017年12月号掲載)