旧社宅棟を併合し、統一管理、仕様で屋上防水工事:2018年2月号掲載
「工事事例」 Hプラザ 屋上防水改修工事
1.団地概要
Hプラザは、千葉県千葉市花見川区の丘陵地帯に広がる住宅地の中にある民間分譲団地である。団地規模はPC造5階建住棟13棟360戸、1973年入居で当改修工事実施時は入居44年目であった。
近隣には、有数な大規模住宅団地である旧公団建設のH団地をはじめとして、数多くの民間マンションや民間団地と戸建住宅団地や戸建て住宅が広がっている。
2.管理体制の併合と施工形態の統一
Hプラザには一昨年まで、住戸棟13棟の内5棟の電信電話会社の社宅があった。社宅棟の管理は建物所有会社の管理部門による管理がされており、管理組合による 管理と二本立ての管理体制となっていた。したがって、建物の維持管理も別建てで、修繕工事に於いても実施時期・工事仕様等それぞれ独自に実施されていた。その後、社宅棟売却の方針が浮上し、2010年2月竣工の「第3回大規模修繕工事」に於いて、管理組合と社宅棟所有会社の協議により、初めてコンサルタント方式を採用して統一仕様による修繕工事として同一施工会社による同時施工が実施された。屋上防水に関しては、経年数並びに劣化進行状況からの判断により改修対象外とした。
3.異なる防水仕様の統一
旧社宅棟売却が完了して、管理体制が管理組合に1本化したことから、管理組合は屋上防水に関して検討を始め、2017年度初めに設計事務所に調査と計画を依頼した。
管理組合管理の旧一般棟は2001年施工の‘露出アスファルト防水トーチ工法’、管理棟は2002年施工の‘露出アスファルト防水密着工法’であり、旧社宅棟は1998年施工の露出塩ビシート防水絶縁工法による施工がなされていた。
屋上防水の改修仕様は、次回の改修仕様を統一できる仕様として‘砂付きルーフィングによる露出アスファルト防水工法’を選定し、立上り部については全面撤去による防水層の更新、平面部については既存防水層の上に新規防水層の増し貼りとした。また、屋上突起物(TVアンテナ基礎、ハッチ立上り、通気管立上り部)については既存防水層撤去して防水層更新とした。
また、改修時期は既存防水層の調査結果により、旧社宅棟防水の経年が19年目となる2017年とした。
パラペット端末金物については、旧一般棟のアルミ製アングル金物は撤去更新とし、旧社宅棟のアルミ製笠木金物は一時撤去再取付とした。
4.改修防水仕様
旧一般棟及び管理棟の平面部は改質アスファルトシート防水単層密着工法、旧社宅棟の平面部は改質アスファルトシート防水2層機械的固定工法とし、全棟の立上り部は改質アスファルトシート防水2層密着工法、屋上突起物は改質アスファルト系塗膜防水併用工法とした。また、露出防水層表面の保護塗装は、特殊高反射率保護塗料(遮熱塗料)仕上げとして、防水層並びに躯体の保護を強化した。なお、保護塗装を遮熱塗料としたことにより、一般的な保護塗装の塗り替え周期5~6年を9年前後の周期に延長可能となった。
また、既存防水層の調査時に、脱気筒根元のシール箇所に鳥害による防水層の破損が確認されたので、新規防水層施工後に鳥害対策として、脱気筒根元にステンレス製ネット籠加工品を設置して防水層保護とした。
5.工事を終わって
今回工事に当たって、管理組合理事会並びに修繕委員会による組合員・居住者に対する綿密な対応と施工会社による説明資料の全戸配布やきめ細かな施工状況の掲示等の対応により、工事期間中に苦情もなく竣工を迎えることが出来た。特に旧社宅棟においては、新規防水層をデイスク打ち込みによる機械固定工法による施工のために振動と騒音の発生があったが、居住者をはじめとする皆様の協力により無事作業を終了する事ができた。
また、工事期間中の予想外の悪天候続きにより一時は20日間以上の工事遅延となったが、施工チームの増員等施工会社の頑張りにより、予定通り年末までに仮設撤去を含めた工事を完了する事が出来た。
屋根防水の仕様は、既存と同じ露出アスファルト防水であるが、環境対応型改質アスファルト防水ノンケルト冷熱工法(田島ルーフィング・BANKS工法)としている。これは信頼性の高い溶融アスファルト熱工法の良さを残しながら溶融釜(ケルト)を排除して臭いや火気の危険性を除いた工法で、今回は50ppmの断熱材を防水層下に敷き込み、トップコートには遮熱性塗料を使用。
懸案となっていた排水通気管の防水層貫通部については、屋上の設備配管取出し口として一般的に「ハト小屋」と呼ばれる部分に使用する既製品の「HATOCOT」を設ける事とした。これは本体が繊維補強コンクリート(FRC)で作られ、天端の蓋はFRP製でユニット化されている。通気管貫通部分の既存防水層撤去後にこれを設置すると新規防水層とこの後で行う排水通気管の取替が別々に施工出来る。屋上防水の改修工事と排水管改修工事の進行ペースが異なるが、この「HATOCOT」によりうまく調整する事が可能となり、屋上防水を先に進める事が出来た。その他、これを機に屋上に付く不要なアンテナや金物類を撤去し、なるべく漏水の危険性を減らす事とした。
大きな事故やトラブルも無く良好な工事が順調に終了出来たのは、工事を担当した建装工業(株)現場担当者の技量と努力によるものであるが、この間、毎月工事協議会に参加し熱心に対応していただいた管理組合修繕委員会の皆様の尽力無しでは不可能であった。又、工事期間中の不便や騒音等に耐えてご協力いただいた居住者の皆様にも感謝する次第である。尚、同時に着工した給排水改修工事は、本年8月末までの予定で、現在も順調に進行中である。
設計・監理=一級建築士事務所 秋設計
施工=日本防水工業株式会社
(2018年2月号掲載)