築40年団地型マンションで環境省の補助金を活用したアルミサッシ改修工事:2019年3月号掲載
【マンション概要】
A団地は本厚木駅から徒歩圏内にある280戸、5階建て12棟の団地型マンションである。1979年に分譲された当団地は2019年度で築40年になるものの、数年前には大規模修繕工事も実施され、管理の行き届いた良好な状態にあった。ただし、アルミサッシや玄関扉は40年前のままであり、居住者にとっては住環境改善として積極的な交換が望まれる事項になっていた。
【工事準備と補助金】
現在、アルミサッシの改修工事に対しては、一定の基準を満たす製品を使う事で、環境省から補助金を受けることができる。ただし、環境省の補助事業には予算に限りがある為、審査基準に対する上位物件から補助金採択となり、下位物件は補助金不採択の可能性が生じる。
これに対し、マンションの管理組合という組織を勘案すると、当該補助金に関しては準備がしにくい側面がある。まず、補助金交付までの一連の流れは、4月に公募要領・補助金審査基準の公表、5月に補助金申請、7月に補助金交付決定の通知、その後に工事請負契約、着工、年内竣工が標準的なスケジュールになる。一方、マンションにおいてアルミサッシ改修工事の様な大規模な工事を計画する場合は、少なくとも半年以上前から準備を進めるのが望ましく、審査基準が公表される4月から準備をしたのでは、5月の補助金申請に間に合わない。
したがって、管理組合は審査基準を知らないまま事前に準備を進め、5月の補助金申請に臨む必要がある。A団地でも2017年秋頃から準備を進めた経緯がある。
【ガラスの仕様】
今年度の補助金審査基準は例年とは異なり、ガラスのグレードがG1・G2とした二つに区分されていた。今回、A団地では上位グレードであるG1仕様のガラスを採用しているが、この事は断熱性能の向上に大きく寄与したと言える。一般的なLow-E複層ガラスは空気層に「乾燥空気」が充填されているのに対して、今回採用したG1仕様のガラスは、空気層に「アルゴンガス」が充填された高性能Low- E複層ガラスとなっている。
【工事実施率100%】
補助金を受けるためには原則として全住戸全窓の工事を行う必要がある。しかし、280戸という住戸数を鑑みると、工事中、連絡の取りにくい住戸も含まれる。これについても、事前に管理組合が連絡方法などの対策をとり、施工会社と連携することで、比較的スムーズに工事が実施できた。
【工事を終えて】
工事を終えて、『とても快適である。断熱、遮音性能がとても良くなった。』との感想が多く寄せられた。今回の工事では、断熱性能が向上しただけでなく、遮音性能など窓そのものの基本性能が飛躍的に向上している。これらの性能向上が、居住者の実感としてあらわれた様であった。
【おわりに】
本工事の成功の裏には、難しい補助金申請や工事実施に対する施工者の実直な業務姿勢も大きく寄与しているが、事前準備を含めた管理組合の積極的な活躍が光った。
㈱スペースユニオン 一級建築士 藤木亮介
(2019年3月号掲載)