1回目の大規模修繕工事 建物の初期性能の回復に主眼:2019年6月号掲載
Rマンション大規模修繕工事(東京都江東区)
㈲八生設計事務所 鈴木和弘
建物概要
「Rマンション」は、東京メトロ東西線の東陽町駅から徒歩9分に位置する分譲マンションです。
建物は2005年竣工、鉄筋コンクリート造の14階建で、建物の形状はL字形で開放廊下タイプです。外壁は、白を基調としたタイル張りに、アクセント色として緑色のタイル張りと青色の塗装を組み合わせた仕上げとなっています。また白のタイルは形・模様が5種類に分かれて張られており、デザイン性に優れた外観のマンションです。
大規模修繕工事実施までの経緯
管理組合では理事会の諮問機関として修繕委員会を設け、大規模修繕工事の計画を進めました。設計事務所選定後は、理事会と修繕委員会のメンバーで計9回の打合せを行い、2017年の7月から建物調査、工事内容の検討、施工会社の選定と進めて行き、調査を開始した約1年後の2018年6月の臨時総会で、大規模修繕工事実施の承認を得ました。
また、今回の工事では、設計事務所の選定から施工会社の選定までを、NPO日住協の大規模修繕工事支援制度サービスを利用して、日住協の支援を受けながら進めました。
工事内容
今回の工事は、第1回目の大規模修繕工事ということもあり、建物の初期性能の回復に主眼を置きました。
具体的な内容としては、コンクリート劣化部の補修、外壁タイル劣化部の補修、外壁・天井面の塗装塗り替え、シーリングの打ち替え等の足場が必要な工事、建物の耐久性能上重要な工事は全面的な修繕を行いました。
劣化が大きく進んでいなかった屋根防水、バルコニー・開放廊下・屋外階段の床シートは、足場も必要としないため部分補修にとどめ、修繕費用を抑えることにしました。
また、予算の範囲で出来る以下の性能向上工事も行いました。
①塗装仕上げから防水仕上げへの変更
コンクリートのひび割れが発生しやすいバルコニーの手摺壁の天端や、開放廊下・屋外階段の手摺立ち上がりの天端は、当初の塗装仕上げからウレタン塗膜防水仕上げに変更し、建物の構造体であるコンクリートの保護性能を向上することで、耐久性向上を行いました。
②排気汚れの改善
外壁や廊下天井に設けられた排気口からの排気が外壁・天井を汚していたため、外壁や天井を汚しにくい排気形状の金物に取り替え、建物の美観性の向上を行いました。
工事中の対応
工事は2018年の8月20日から約5ヶ月の工期で行われました。
工事の準備段階では、敷地内の駐車場の車の移動対応が課題となりました。
本マンションの駐車場は平置き駐車場と機械式駐車場が設けられており、平置き駐車場の一部は、仮設足場の位置と重なり、工事期間中の車の移動が必要になる状況でした。管理組合からは敷地外への車の移動を避けたいとの要望があったため、仮設足場は車の移動が最小限になる計画とし、かつ移動が必要になった車は、平置き駐車場や機械式駐車場の空き区画や来客用駐車場への移動を、施工会社の担当者が車のサイズを確認しながら割り振り、何とか敷地外への車の移動を行わずに足場の組み立て・解体を行う事が出来ました。
工事段階では、外壁タイルが前述の通り6種類あり、その他にアクセント色のタイルが2種類と計8種類のタイルを、全て新規に色合わせを行い製作しました。各タイルの製作数量は、全体外壁面積に占める比率で決めていましたが、外壁タイルの調査を進めていったところ、部位や色の種類によって劣化状況が異なっていることが分かり、一部の色・模様のみ追加製作が必要になってしまいました。そのため、工事は1ヶ月強の延期となってしまいましたが、その他の工事は順調に進み、無事に工事を完了することができました。
最後に、設計期間・工事期間における様々な検討事項に対して、理事会・修繕委員会のメンバーの方々が対応していただいたこと、タイル補修などによる騒音・振動の発生に対する居住者の工事への理解と協力のおかげで、無事に工事を完了することができ、感謝申し上げる次第です。
(2019年6月号掲載)