LED化等のオプション工事にも対応した4回目の大規模修繕工事:2019年9月号掲載

(有)八生設計事務所 一級建築士 鈴木 和弘

建物概要・工事までの経緯

 N台団地は、多摩モノレールの泉体育館駅から徒歩9分に位置し、徒歩数分の圏内には小学校や商業施設があり、生活しやすい環境に立地するマンションです。

 建物は昭和42年竣工で、5階建の階段室型住棟が9棟、計240戸の旧日本住宅公団(現・都市再生機構)分譲の団地型マンションです。

 過去、大規模修繕は築13年目に第1回、築26年目に第2回、築39年目に第3回と13年周期でしっかり行ってきており、アルミサッシと玄関ドアは築44年目に全面改修を行っていました。そのため、建物は高経年ですが外観はきれいに保たれていました。

 管理組合では、第3回大規模修繕の10年後の平成28年(築49年目)に、NPO日住協の1日診断を実施して建物の劣化状況を把握しました。1日診断では大規模修繕工事の準備を進める時期に来ているとの結果であったため、管理組合は、平成29年にNPO日住協の大規模修繕工事支援制度サービスを利用して、設計事務所の選定から調査・設計へと進んでいきました。

工事内容

 当団地は定期的に大規模修繕工事を行ってきており、大きな劣化の進行は見られませんでしたが、外壁のひび割れ・鉄筋曝裂・モルタルの浮きなどの建物の躯体の経年劣化は散見される状況であったため、まずは建物の躯体補修をしっかり行うことを第一の目的とし、加えて階段室床面の新規防滑塩ビシート張りや照明器具のLED化、集合郵便受けを大型郵便物が入るサイズへの取替、掲示板をA4サイズ用紙が8枚貼れるものへ取替、室名札をステンレス製に取替などの改良・改善工事を計画しました。

 また、工事内容を検討していく中で、個人負担で行うオプション工事についても居住者からの要望が多くあり、浴室防水の改修、台所の排気フード取付・換気扇取替、トイレ換気口のレジスター取付、住戸内の結露対策工事などをオプション工事として計画していくこととしました。

工事中の対応

 工事は平成30年の8月27日から平成31年の2月23日までの約7ヶ月の工期で行われました。

 本工事は遅れもなく順調に進みましたが、オプション工事の希望者が想定以上で、その対応に時間がかかったこと、また外構の舗装や雨水の埋設排水管補修の追加工事も行う事としたため、工期は追加工事も含め1.5ヶ月の延期となりました。

 工事中は、工事会社の現場担当者が居住者とのコミュニケーションや、居住者からの問い合わせへの対応を重視して取り組んでおり、また作業員への指導も徹底して行っていたこともあり、工事中は大きなトラブルもなく、工事が完了することができました。工事中の12月には、工事会社主催でクリスマス会も実施し、居住者やそのお子様との交流も持つことができ、その後の工事におけるコミュニケーションにも大いに役立ったと思います。

 管理組合は、設計開始から工事完了まで、理事会に協力者が加わったメンバーで打合せを進めていきました。工事期間中は、月1~2回程度のペースで工事の進捗状況や、居住者からの問合せへの対応内容の報告、その他工事における検討事項などの打合せを行いました。時には工事現場で足場に上っての工事内容の確認や、取り替えた外灯の明るさの夜間現地確認などを管理組合・工事会社・設計事務所で行い、工事を進めていきました。

 最後に、工事がスムーズに進められたことは、工事中の様々な検討事項を、理事会・協力者の皆様で熱心に取り組んで頂いたこと、また、居住者の工事への理解と協力の賜物と感謝申し上げる次第です。

(2019年9月号掲載)