窓アルミサッシ改修工事:2020年3月号掲載
マンションの概要
T住宅は厚木市に建つ5階建て10棟250戸の団地型マンションである。1977年に分譲された当住宅は、2019年度で築42年目になる。
サッシ改修工事の実施時期
当住宅では、多額の費用が必要になる修繕工事として、過去に2回の外壁等大規模修繕工事、給水設備改修工事、雑排水管更新工事を実施している。また、近い将来実施を予定する工事としては、第3回目の外壁等大規模修繕工事を見据えている。
これに対し、窓アルミサッシ改修工事を第3回目の外壁等大規模修繕工事に併せて実施するか、あるいは外壁等大規模修繕工事は数年先になる事から、先行して実施するかの検討が行われた。窓アルミサッシ改修工事はマンションで実施する工事の中でも、高額費用がかかる工事として位置付けられ、資金計画上もそのタイミングは慎重に検討しなければならない。
これに対して管理組合では、長期修繕計画の見直しをおこなった上で、資金調整等を含めて検討を進めた。その結果、居住者の住環境を飛躍的に向上させる窓アルミサッシ改修工事は、極力早期に実施したいとの結論に至った。そこで、2018年度には窓アルミサッシ改修工事に関する見積図書の作成・施工会社選定をした上で、2019年度に工事を実施する計画となった。
補助金の活用
近年、マンションにおける窓アルミサッシ改修工事で注目されている事項として、環境省による「高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業」の補助金制度がある。申し込めば必ず補助金が付くといったものではないが、管理組合にとっては非常に魅力的な制度と言える。そこで、当住宅では当該補助金を積極的に利用する方針で準備を進めていった。
窓アルミサッシ改修工事の意味
窓アルミサッシ改修工事は、劣化を要因として改修が必要になるというだけではなく、機能的陳腐化を要因として改修が必要になる側面がある。特に冷暖房効率の向上は、高齢化が進む当住宅において非常に重要な意味を持つ。また、窓アルミサッシの結露対策についても多くの住戸で改善したい事項であったと推察される。
樹脂複合サッシの採用
当初の計画では「アルミサッシ」を採用する事としていたが、断熱性の向上、結露対策を重視し、サッシの室内側が樹脂で被覆された「樹脂複合サッシ」を採用する事となった。窓の改修工事にあたっては、高い断熱性を有するペアガラスを採用した場合でも、熱伝導率の高いアルミ部分は結露し易い。これに対して室内側のアルミ露出部を樹脂で被覆した樹脂複合サッシは、窓ガラス以外の部分も結露しにくくなる。また、二次的な要素ではあるが、樹脂複合サッシはアルミサッシに比べて冷たさを感じず、手触りが良いという印象があった。
おわりに
本工事の成功は、施工会社の実直な業務姿勢も大きいが、管理組合の積極的な活躍も大きい。管理組合が率先して動く事で、各居住者との調整等がスムーズに行われた。
㈱スペースユニオン 一級建築士 藤木亮介
(2020年3月号掲載)