相模湾湘南地域に立つマンションの3回目の大規模修繕工事:2021年8月号掲載

 当建物は、周辺に商業施設や集合住宅が立ち並ぶ、築41年の9階建てのマンションである。立地は、湘南地域の相模湾海岸線から2キロ弱で塩害の影響があり、鉄部の劣化が潜在的に著しい。

 前回の大規模修繕工事を実施した実績を踏まえ、前回から14年目を迎えたところで第3回目の大規模修繕を引き続き担うことになり、検討の結果、通常の維持保全に加えて、以下の工事を併せて実施することになった。

◆玄関ドアの更新(写真-1)

 建物診断業務の一つとして実施したアンケート調査で、ドアと枠のすき間や、開閉時の不調などの不具合が多数挙がり、玄関ドアを更新することとした。当マンションの立地は、鉄道に近いことで鉄粉被害も一部で起きていることから、扉本体は環境対応型化粧鋼板を採用して塗膜を厚くした。扉枠は、高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板の採用など塩害対策仕様とし、扉枠と扉本体の間を大きくとることで枠変形による扉との干渉を緩和することができる対震仕様とした。ドア本体のデザイン決定は、ドアの現寸大サンプルやドアノブ実物などを展示し、すべての居住者が事前に確認できるよう配慮し、何らトラブルなく工事を終えることができた。

◆室内漏水の止水処理(写真-2、3)

 漏水に悩まされている住戸があり、管理会社の調査により外壁からの漏水の疑いが高いとのことで、大規模修繕工事の着手を待って詳細調査を行うこととしていた。足場架設後、散水テストや暴露調査を行った結果、ひび割れ誘発目地底に発生したひび割れが漏水の原因であることが判明した。今回の工事では、目地のシーリングの打ち替えだけでなく、外壁の打継目地部やひび割れ誘発目地を詳細調査し、疑わしい部位は親水性発泡ウレタン樹脂を注入し、止水処理を徹底して実施した。

◆窓サッシ戸車等部品交換(写真-4)

 窓サッシ戸車等の消耗部品は、前回大規模修繕工事においても一部の部品を交換したが、その後の経過で、開閉が重く騒音も発生することや、気密材の劣化によりすき間風が入るなどの不具合箇所が進展した。築年数と劣化状態から判断すると、窓サッシの交換時期としてもおかしくはないが、予算の都合から戸車・戸先気密材などの部品交換を行うことになった。なお、窓サッシ等の消耗部品は、専用使用部分として区分所有者の責任と負担で管理することになっているが、全戸共通の修繕であることから、今回の大規模修繕工事で実施することとした。

設計・監理/有限会社 鈴木哲夫設計事務所

一級建築士 髙橋久志

2021年8月号掲載