給排水他設備改修工事について:2022年4月号掲載

■立地と建物概要

 S住宅は東武東上線の成増駅と和光市駅からバスで10分の和光市の諏訪原団地に建設され、西側に国立病院機構埼玉病院、北側には国の研究施設と西側には和光市運動場を挟んで国の研究施設があり、閑静な場所で高齢者に優しい中層住宅群です。

 入居が1966年(平成41年)、改修工事時築54年目の5階建て19棟、住戸数580戸の高経年大型中層団地で、住戸タイプは3DK住棟370戸、3DK2住棟5150戸、3LK住棟11360戸の3住戸タイプで構成された団地です。

■今回の給排水他設備改修工事の特徴

 ①給水システムの変換:高架水槽給水方式からポンプ圧送給水方式への変換で、埋設コンクリート製受水槽から地上設置ステンレスパネルタンク2基(中仕切り2槽)に変換し、屋内設置揚水ポンプを屋外露出設置型ポンプ圧送給水装置4基に変換した。

屋外露出型ポンプ圧送給水装置

新ステンレス製地上設置受水槽と動力配電盤と給水塔

 ②埋設給水管の更新:非耐震管の石綿管から耐震管の高性能ポリエチレン管に団地内を4系統に分けて敷設更新を行った。

既存屋外埋設給水主管(石綿管)

新設屋外埋設給水管(高性能ポリエチレン管)敷設状況

 ③住棟内共用排水システムの変換更新:従来継手伸頂通気方式の浴室・洗面系立て管、トイレ汚水立て管を特殊継手排水方式に変換し、浴室排水を単独立て管に、洗面・洗濯・便器排水を合流立て管に住戸内排水経路の変更を行った。既存排水管材の配管用炭素鋼鋼管と排水鋳鉄管を腐食しない耐火塩ビ管+消音カバーに更新した。

 ④排水管の位置替えと新設:洗面器排水管取出し位置を床仕上げ上から床内に位置替えを行った。浴室にホースで排水していた洗濯機排水漏水対応を、洗濯排水枝管の新設を床内配管で行った。将来用ユニットバス化対応スラブ上排水接続管の新設を行った。

旧便器サニタリー管横引き接続

新便器サニタリー管床内接続

 ⑤浴室排水口の劣化延命対応:ユニットバスにリフォームしていない住戸の浴室排水金物のエポキシ樹脂塗布延命化を行った。

 ⑥トイレと洗面所のバリアフリー化:洗面所より一段下がったトイレの床を、洗面所と廊下の床と合わせた。

 ⑦専有部分の給水管更新:オプション工事で希望住戸対応を行いました。

■居住者の皆さまに改修工事が必要であることの周知とご理解・ご協力

 今回の住棟内の排水管更新工事は、住戸内にある設備配管の取替工事でしたので、住戸内入室工事となるため「改修工事が必要であること」「改修工事の内容について」「在宅他のご協力やお願い事項について」など、居住者への周知・理解・協力が不可欠な工事ですので、和光市運動場の公園管理事務所2階大会議室で設計事務所が「劣化調査結果と基本計画内容」を4回、設計完了「設計工事依頼内容」を4回、建装工業()が契約後に、工事着手説明会を6回、住戸内入室工事説明会を6回行っただけではなく、事前全戸調査時に個別説明を行ない工事内容の周知・ご理解・ご協力を図った。

 全580戸の入室工事が終わりましたが、住戸内調査時には1割近くの住戸と連絡が取れず理事会の皆さんと管理事務所の方と建装工業の担当者が苦労して、何とか工事前に連絡が取れ無事に工事ができたことは、今後の管理組合の維持管理に役立つと思いました。

■工事等

 全体工期は202081日~20211225日、実施工期は2021112日~1130日で工事を行った。工事着手を遅くし、住戸内入室工事を受験生対応と春の気候の良くなった時期からにした。工事着手説明会後に仮設物設置と全戸調査と先行工事を行い、確定した住戸内入室工事日程で住戸内入室工事説明会を行い、入室工事は5日+予備日の6日間で終わらせました。工事はコロナ禍の最中であったが、滞りなく終わったことは、計画段階から工事完了までの管理組合理事長はじめ理事の皆さまと建装工業の現場の皆さんの熱意があったからと感じています。

有限会社トム設備設計 町田 信男

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2022年4月号掲載)