第2回大規模修繕工事:2023年9月号掲載
1 建物概要
Sマンションは、東急池上線の池上駅から徒歩7分の位置に立地する分譲マンションです。
建物は1999年竣工、鉄筋コンクリート造の5階建で、建物はコの字型形状で、共用廊下には中庭や複数のライトコートとして吹抜が設けられており、玄関までのアプローチの景観が変化に富んでいて、落ち着いた雰囲気のマンションです。
2 大規模修繕工事実施までの経緯
管理組合では第1回大規模修繕工事後10年目の2019年(築20年)に、第2回目の大規模修繕の実施時期や注意事項を検討するために、日住協の1日診断を行いました。1日診断の結果は、鉄部の腐食等で一部早急に補修が必要な箇所がありましたが、大規模修繕工事は一般的な修繕周期である12~13年(2~3年後)で問題無いとの所見でした。
管理組合は前回の大規模修繕から13年後の2022年秋に第2回大規模修繕を行う予定とし、2020年12月から設計事務所選定を開始しました。2021年5月の臨時総会で設計事務所を決定し、2021年6月から設計事務所による調査・設計業務を開始しました。設計作業の過程で、当初設定した工事時期では大規模修繕工事会社が繁忙であることが分かり、工事時期を半年遅らせ、2023年2月に工事を着工する予定に変更しました。
施工会社は、業界新聞での公募、見積依頼~受領、ヒアリングを経て㈱リニューアルウィングスに決定し、2022年10月の臨時総会で工事の承認を得ました。
また、管理組合は大規模修繕工事の検討と並行して、玄関ドアの改修の検討も進め、玄関ドアのカバー工法改修を大規模修繕の施工会社とは別の会社で行うこととし、上記臨時総会で玄関ドアの工事の承認も得ました。玄関ドアの改修工事は東京都及び国交省の補助金を活用することができ、工事費の削減を図ることができました。
3 工事内容
今回の工事は、外壁・鉄部塗装、タイル補修、シーリング改修等の一般的な大規模修繕工事項目に加え、まだ全面張替を行っていなかったバルコニー・共用廊下床面の防滑塩ビシート全面張替、吹抜部の外壁汚れの原因となっていた排気口金物の取替、屋上の伸頂通気金物腐食部を掃除口付アルミ製金物に取替、エントランス風除室出入口両開きドアの二重片引き自動ドア化改修等を行いました。
吹抜部の排気口金物は、既設金物が上下吹き抜け型フードで金物上部の汚れが著しかったため、深型のフード付金物に取り替えました。既存の排気口金物を撤去した際に内部を確認したところ、上下吹き抜け型フード内部に取り付けられていた防鳥網に目詰まりが発生しており(写真)、著しく排気が阻害されている状況でした。新規金物に取り替えた後は、換気扇からの騒音低減や換気量向上などの効果があったとの声をいただきました。
工事は2023年の2月6日から7月8日までの約5ヶ月の工期で行われました。
タイルの納期や雨の影響で工事は少し遅延し、その結果大規模修繕工事竣工直後に行う予定だった玄関ドア工事との調整が発生したため、大規模修繕工事の竣工は1ヶ月強の延期となってしまいましたが、無事に完了することができました。
4 さいごに
今回の工事は、検討開始時から工事完了までの長きに渡り計画を進めてきた修繕委員会の皆様や、その期間修繕委員会と一緒に活動してきた各期の理事会の皆様が、都度連絡を取り合い、協議していただけたことが、設計事務所や工事会社にとって大いに助けとなりました。
設計・監理 ㈲八生設計事務所 鈴木和弘
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2023年9月号掲載)