大規模修繕委員会が主体となった第二回大規模修繕工事:2024年3月号掲載

1.建物概要

  「Kマンション」は、JR中央本線の国分寺駅から徒歩15分の位置に立地し、近隣には公園・体育施設・スーパーがあり、生活しやすい環境にあるマンションです。

 建物は1996年竣工、鉄筋コンクリート造の5階建で、全46戸全てのバルコニーが東向きに配置されています。

2.大規模修繕工事実施までの経緯

 管理組合では第1回大規模修繕工事後10年目の2019年(築20年)に管理会社による建物調査及び第2回大規模修繕工事の見積提出を受け、責任施工方式による大規模修繕工事の検討を開始しましたが、検討を行っていく中で、将来のマンションのためには、管理組合が主体的に判断して大規模修繕工事の検討を進めていくことが重要と考えるようになりました。ただし、主体的な判断をおこなうためには適切な第三者機関の活用が必要であるため、助言を求める機関としてNPO日住協に入会し、また大規模修繕のための専門委員会(大規模修繕委員会)を立ち上げました。2021年8月の臨時総会では、それまで検討してきた一業者に全てまかせる責任施工方式から、設計・工事監理と工事施工を分離して異なる業者にまかせる設計監理方式に変更し、改めて大規模修繕工事の準備を進めていくことを決定しました。

 その後、設計事務所選定を経て、2021年12月から設計事務所による調査・設計業務を開始しました。

 工事内容は、設計事務所から出された基本計画書における必須の修繕項目は工事対象とし、その他の管理組合からの要望や設計事務所から提案で検討した工事項目は、管理組合で優先順位を付け、施工会社からの見積提出後に、予算に応じて実施する範囲を決定することにしました。

 施工会社の選定は、業界新聞での公募等から6社を選定し見積依頼をおこないました。その後、見積比較~ヒアリングを経て南海工業㈱に決定し、2023年1月の臨時総会で工事の承認を得ました。

3.工事内容

 今回の工事は、外壁・鉄部塗装、タイル補修、シーリング改修等の一般的な大規模修繕工事項目に加え、まだ全面改修をおこなっていなかった勾配屋根のシングル葺きの全面防水改修や、その他屋外階段への補助手摺設置、屋外出入口門扉の取替などの金物・建具工事を実施しました。

 アルミサッシについては、管理組合が直接専門会社に依頼し、部品交換や点検・調整工事を実施しました。

 大規模修繕工事の工期は2023年8月1日から2024年1月15日までの約5・5ヶ月で実施し、工事は予定通り1月15日までに完了しましたが、竣工検査のあとに再点検をおこなったため、工期は半月ほど延長しました。

特徴のある勾配屋根全景

4.大規模修繕委員会との打ち合わせ

 大規模修繕委員会は、全戸数の約4分の1の12名の方が参加されていました。小規模マンションでここまで委員が集まることは珍しく、マンションの維持・管理に積極的に関わる人が多いことは、マンションの将来に向けての大きな財産になると感じました。

 打ち合わせでは、委員の方達から様々な視点で色々な意見がでましたが、最終的には委員会の中で意見をまとめていただいたため、打ち合わせた結果が明確になり、設計・工事の作業をスムーズに進めることができたと思います。

 また、委員会が活発に活動していることで、居住者の工事の理解度も高く、工事を進める上で、設計事務所や工事会社にとって大いに助けとなりました。

㈲八生設計事務所 鈴木和弘

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2024年3月号掲載)