サスティナブルな団地に生まれ変わったライフライン改修工事:2024年5月号掲載

 M住宅は、JR武蔵野線新三郷駅から徒歩約20分。1974年(昭和49年)築、RC造地上5階建26棟、総戸数688戸です。

 当団地で給排水・ガス設備改修工事(ライフライン改修工事)が動き出したのは、2015年の第3回大規模修繕委員会にて給排水管改修の検討を始めてからです。

 発端は、日住協主催の研修セミナーで、横浜市緑区の霧が丘グリーンタウン第一住宅の見学会に参加し、そこで(有)マンションライフパートナーズを知ったことです。

 その後、2018年8月ライフライン改修工事準備委員会が発足し、給排水管改修の検討が再開され、その半年後には、NPO日住協に工事支援業務を委託し、同年5月の通常総会で、(有)マンションライフパートナーズへの設計コンサルタント業務委託が承認され、12月、正式に契約締結しました。

 また、三郷市が2016年からスタートしたマンション耐震診断補助制度を利用して、経費の3分の2が交付される耐震診断を2020年から22年の3年間で全26棟、工事の検討と並行して実施しました。

 結局、この工事を進めるため、通常総会2回、臨時総会1回、住民説明会3回、26棟の棟別ビデオ上映会。加えて、工事に必要な規約改正等も通常総会にて実施しました。

 その後2022年7月の臨時総会にて、住宅金融支援機構からの借入れ額の承認や実行委員会設立などの議案承認を経て、工事が2022年10月にスタート。共用部分の直結増圧方式の水道管や排水管の新設などを実施し、昨年2023年7月から組合員宅の室内工事がスタート。風呂、洗面所、トイレ、洗濯パン、ガス管、給排水管などの工事を実施し、本年3月で全棟、全室の工事が終了しました。

 本工事の完成は、(有)マンションライフパートナーズや日住協、準備委員会、実行委員会の皆様の賜物ですが、要因が何点かあります。

 一つ目は、特に、私共のように高齢化率の高い組合では、高齢者や要支援者など、生活弱者を基準にし、組合員一人も取り残さず工事を行うことが最重要と考えました。その中で、生まれたのがライフライン改修工事実行委員会で進めた、自宅風呂を改修工事中、近郊の温泉施設へのタクシーによる搬送でした。また、希望者には、高齢者や要支援者宅等の片付け、ゴミ屋敷の片付けも実行委員で実施しました。

 また、室内工事の際には、組合員が利用する休憩室や夜間勤務の方の為に、集会所2階和室を利用した休憩室を準備。シャワー室やランドリー室も作り、日本住生活㈱の窓口にも6時までの1時間の時間延長をお願いし、土日祝日は、実行委員2名体制で運営しました。相続人のいない住居や高額滞納住居など2件の裁判もありましたが、財産相続清算人の弁護士や裁判当事者が遠方にいる組合員と弁護士を通じて連絡し、鍵を借り、その工事も終了させました。その他、賃貸で非居住の組合員にも資料の配付等を行い、全組合員宅の室内工事を大きな問題もなく無事に終了出来ることになりました。

 二つ目は、実行委員会のメンバー構成です。準備委員会は男性中心だったので、工事期間は生活者である女性の意見が特に大切と考え、女性メンバー4人に声がけして、実行委員として参加してもらいました。

 三つ目は、工事費用の資金繰りです。工事の入札時期、人件費や資材が高騰を始めた時期でした。修繕積立金は約14億円。準備委員会でも、風呂の防水策としてユニットバス化を推進。その中で、全棟管理組合の借り入れで全室ユニットバス化との意見もありましたが、築50年の建物や今後の長期修繕計画を考えると、高額な負債は出来ないと考え、国交省のマンションストック長寿命化等モデル事業に申請し、採択。最終的に申請工事費約19億円のうち申請工事費11億円の3分の1、約3億5千万円の費用が満額交付されました。

 また、高額なユニットバス費用を抑えるために、管理組合が組合員一人に50万円の補助を出すことで、124,000円でユニットバスに出来ることを訴え、結果的に組合員の93%以上が工事を行いました。

 管理組合として、修繕積立金約1億円を残した上で、借り入れも1億円前後に収まりそうです。

 四つ目に、実行委員会の献身的な行動が、工事完成の大きな要因です。室井実行委員長のゼネコン現場での経験による豊富な知識と知恵、佐藤副委員長の国の外郭団体で勤務された実務経験、川上副委員長の町会福祉部で培われた高齢者や要支援者への対応、染谷書記の八街区ひろば編集長としての堅実な文章力、そして実行委員会役員の皆様全員の団結力で完成できたものと思います。

 結びに、工事を支えて頂いた、(有)マンションライフパートナーズ様、NPO日住協様、京浜管鉄工業㈱様はじめ関係者の皆様に御礼を申し上げます。

管理組合理事長 中野照夫

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2024年5月号掲載)