排水立管の一本化と横引管をスラブ上化:2015年12月号掲載
1、建物概要
A団地は、小田急線本厚木駅から徒歩圏内に位置し、竣工が昭和54年、建物はプレキャストコンクリート壁式構造で5階建が全12棟、計280戸の旧日本住宅公団(現・都市再生機構)分譲の団地型マンションです。
2、管理組合の取り組み
マンションのメンテナンスは計画的に行われており、築12年と24年に計2回の大規模修繕を実施し、築25年に台所系統排水立て管の取替、築32年に建物内の共用給水管の取替を行っています。管理組合では、共用給水管改修が終わった築33年目の平成24年に、長期修繕計画の見直しを実施し、今後の修繕計画の整理を行いました。長期修繕計画では、3回目の大規模修繕の前後で想定される工事として、雑排水管改修が上げられていたため、雑排水管の内視鏡調査と抜管調査を行い、雑排水管の修繕時期の検討を行う事としました。
調査の結果、雑排水管の改修は早期に実施した方が良いとの報告がされ、雑排水管改修工事実施の計画を進めることとなりました。
3、排水立管一本化と横引管スラブ上化
A団地の排水立て管は、既に改修済みの台所系統を除くと、浴室系統の雑排水管、洗面・洗濯系統の雑排水管、便所の汚水管と3本に分かれており、浴室系統と洗面/洗濯系統の2本の雑排水管は、洗面所と浴室の間の壁の中の隠蔽配管で、便所の汚水管は便所内に露出配管されています。また、立て管につながる各排水器具からの横引き管のうち、洗濯パンからの横引き管のみ、下階の天井裏に配管されている状況でした。
設計の段階では、便所の排水管は鋳鉄製で修繕周期も長いことから今回の工事の対象外とし、雑排水管の2本を取り替える計画としていました。
取替に伴い、今まで下階の天井裏で配管され、自宅からは点検できない状況であった洗濯系統の横引き管を、自階コンクリート床スラブ上での配管に改修することで、全ての排水横引き管が専有部内に配管されるように変更する計画としました。また、今まで2本に分かれていた雑排水立て管は、工事金額削減と今後のメンテナンス費用削減の観点から、取替時に1本化する計画としました。
尚、施工会社選定後に、施工会社からの提案もあり、便所の汚水管も合わせて3本の排水立て管を1本化に出来るかの詳細調査を実施しました。その結果、ラセン管と特殊排水継手を使用し、3本の排水立て管を便所の既存汚水管位置にて、1本化して取り替えることに決定し、工事が進められました。
新設された便所の立て管と横引管
新設された横引管
4、工事スケジュール
工事は平成27年1月中旬~8月末で行われました。まず、1月末から約1ヶ月半で事前全戸調査を行い、その後1階床下の排水管取替を行った後、4月に住戸内の改修をスタートしました。住戸内の改修は2チームで行い、1系統当たり5日間(1住戸5日間の在宅)の工事で進め、予定通り8月初めに全ての系統の工事が完了しました。
5、最後に
今回の工事を行ったことで、住棟内の共用部給排水管の取替が全て完了し、居住者がより安心できる住環境となりました。各住戸の連続5日間の在宅や設備機器の使用制限、工事の騒音が発生する大がかりな工事でしたが、理事会が主導して、工事期間中の様々な課題に対応したことが、今回の工事が成功した要因であり、また居住者の工事への理解と協力の賜物と感謝する次第です。
設計・監理=(有)八生設計事務所
施工=建装工業(株)
(2015年12月号掲載)