給排水管改修で給水管を一部露出配管、排水管は洗面・浴室系統とトイレ縦管を1本化:2018年10月号掲載

(有)八生設計事務所 鈴木和弘

1 建物概要

 S団地は、JR新検見川駅を最寄り駅とし、周囲には商店街・学校・郵便局・公園等があり生活しやすい環境に位置しています。竣工は昭和47年、建物は鉄筋コンクリート造の5階建てで、4つの住戸タイプ(3DK2タイプ、3LDK2タイプ)からなる全16棟、計380戸の旧日本住宅公団(現・都市再生機構)分譲の団地型マンションです。


 S団地

2 管理組合の取り組み

 管理組合は、築42年目の平成26年末に修繕委員会を発足し、4回目の大規模修繕や屋上防水の改修、給排水管改修の検討を開始しました。平成27年の6月~8月には、NPO日住協の大規模修繕工事支援制度を活用することにして、1日診断を実施し、建物・設備の劣化等の現状を確認しました。

 平成27年末にNPO日住協の支援のもとに設計事務所の選定を行い、平成28年3月には設計事務所と大規模修繕及び給排水管改修の設計・監理業務を契約して、具体的な検討を始めました。当初は、大規模修繕と給排水管改修を同時に実施することも考えていましたが、給排水管詳細調査の結果や居住者の負担等を考慮して、大規模修繕工事よりも給排水管改修工事の方を優先する方が良いと判断し、給排水管改修工事を単独で実施することに決め、基本計画・実施設計・施工業者選定と作業を進めました。

 平成29年10月の臨時総会で、管理組合が計画的に共用部を改修する場合に、共用部と構造上一体となっている専有部分の設備などの改修等をできるようにすることと、修繕積立金の取り崩しに関する規約改定、給排水管改修工事の実施(費用・施工業者等)を提案して承認されました。

 管理組合では、工事実施の承認を受けた臨時総会までの間に、組合員・居住者に向けた、改修基本計画や工期等に関する説明会を2回開催し、多くの組合員・居住者に工事の必要性や内容、工事時の注意点を理解して頂けるよう努力しました。また、工事着工前には、施工業者による2回の説明会も行われました。

3 工事内容

 給水管は、住棟の主弁部から住棟内の共用部分の給水管及びメーター以降の住戸内専有部分の給水管を全て取り替えました。排水管は、住戸内の専有部分の横引き管から共用部分の排水たて管及び1階床下の横引き管を建物外の桝まで取り替えました。

 また、工事費の削減として、給水管は一部を露出配管とし、排水管は洗面・浴室系統のたて管とトイレのたて管の2本(タイプによっては3本)を1本化しました。

 その他にも、現状在来工法である浴室の将来のユニットバス化に備え、ユニットバスにリフォームした際に自宅の床下スペースで接続出来る排水横引き管を設けました。

4 工事の実施

 工事は平成29年11月中旬~平成30年7月末までの約8ヶ月半の全体工期で行われました。住戸内の工事は、11月中旬から約1ヶ月で事前全戸調査を行い、翌年の1月に先行工事を行い、その結果を踏まえ工事内容・方法を再検討した上で、3月中旬から7月初旬までの約4ヶ月弱で住戸内の工事を実施しました。住戸内工事は1戸当たり6日+予備日1日の計7日間で工事を進めました。住戸に入らない共用部分の給排水管工事は、住戸内工事の準備期間に実施しました。


 住戸内工事写真

5 最後に

 今回の工事は住戸内の工事で連続7日間の在宅を要し、居住者の方の協力なしには実施出来ない工事でした。計画から工事完了までの様々な課題に対して、理事会・委員会の方々が熱心に対応して頂いたこと、また、居住者の方々が工事の必要性を理解して協力頂いたことが、全ての住戸で工事が完了できた要因であると思います。

 また、各住戸の過去のリフォーム等で380戸380通りの工事内容に対応した工事会社の担当者の努力の賜物でもあると思います。


 建物外観

(設計・監理=(有)八生設計事務所、施工=建装工業(株))

(2018年10月号掲載)