マンションに百年住む (1)
長期優良住宅の普及の促進に関する法律(200年住宅)が昨年12月に公布され、マンションも長期居住の時代になろうとしています。マンション管理の問題や課題についていろいろと論議されている中で、これからのマンション生活を新しい切り口で、マンション問題の精通者に語ってもらうことにしました。シリーズでお届けします。
マンション生活は誰が何と言おうと便利で快適だ。鍵一つで何日も留守にしておれるし、冬の日中は暖房なしで過ごせる。この快適さは捨てがたく、それが証拠にマンションから戸建て住宅に移る人はあまりいない。最近は、郊外の戸建てを手放して、マンションに移る人も少なくない。
しかし、この快適さは、上階から音が響いてきたり、マナーの悪い人が居たりするといっぺんに様子が変わってくる。外壁の傷みや、ペンキの剥がれも、自分一人ではどうにもならないから、その分よけい気にかかる。お隣や上階のことも、外壁のことも、気になりだすと万年頭痛持ちのように頭の隅から離れないから厄介だ。
こうして、本来、快適であったはずのマンション生活の歯車が狂い始める。そこで、自分から管理組合の役員になって改革に乗り出す人もいれば、騒音ノイローゼになって転居を何度も繰り返す人もいる。こんなものかとあきらめて、嫌な人とエレベーターに乗り合わせたら会釈なしのだんまりを決め込む人もいる。会釈しないで知らん振りしても、誰からも何も言われないのがマンションである。
どうやら、この辺りにマンション固有の問題があるように思える。それは、マンションに住む人の、内と外の両方に微妙に絡まっている。この絡み合った糸を少しずつ解きほぐしていくとマンションが持っている本来の快適さを取り戻すことができるに違いない。
何もかも、十把一からげにしたマンション悲観論や、それと表裏一体の建前論にはうんざりする。あちこちのマンションで同じような問題が起こってから後追いする制度論も、問題が起こっているマンションではおおかた役に立たない。
何はともあれ、マンション住まいは自分の快適さが第一である。その総和として、みんなの快適さが生まれればよい。(萬田 翔)
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2009年5月号掲載)