マンションに百年住む (14) 管理会社の企業体質を露呈させた法改正
管理会社の企業体質を露呈させた法改正
五月一日付けでマンション管理適正化法施行規則が改正された。一部の管理会社で修繕積立金などの横領が後を絶たないことから、その防止に向けて改正されたもので、管理組合財産の分別管理の方法、印鑑保管の禁止などを定めている。
ここでは適正化法改正そのものを取り上げるのではなく、この改正に連動して改定された「マンション標準管理委託契約書」について書く。
標準管理委託契約書の方は、適正化法の改正に伴う事項以外に、便乗とも思われるいくつかの改定がおこなわれている。その一つは、これまで「事務管理業務」を下請けに出すことを禁じていたが、一部を再委託できるようにした。これは、管理費などの収納事務を集金代行業がおこなっている実態に対応させたものであろう。
もう一つは、長期修繕計画の作成、見直しを「事務管理業務」から外し、別個契約とした。もともと、管理会社が長期修繕計画を受託業務の一環として作るのは楽な仕事ではなく、その成果物に対する信頼性にも問題があった。そこで、今回、受託業務から外し、工事実施の妥当性などの助言をしたうえで、計画の作成や見直しは別個契約としたのである。
管理会社の業務は、民法でいう「請負」なのか、それとも「委任」なのかという議論がある。今回の改正と、それに連動した標準管理委託契約書の改定は、管理会社が「請負」としての企業体質をより濃厚に持っていることを露呈したといえる。法で規制しなければならないほど横領がはびこり、基幹業務の一部も下請けに出している実態があり、さらには委任性が強く、高度な専門的知識を要する長期修繕計画の作成を別個契約としたのは、管理会社がごく一般の企業と同様、利益追求を第一義とする体質を持っていることを示したことに他ならない。
それにも関わらず、このところ大規模修繕工事の設計監理を管理会社が担う事例が増えている。今後は、長期修繕計画の作成、見直し作業も管理会社が別個契約として担い、フリーの建築士などに下請けにだす傾向が増えるであろう。管理会社は代理店的な性格を強くし、主体をもたない管理組合は、ますます管理会社の企業体質に組み込まれていく。
この際、大規模修繕や長期修繕計画には、管理会社の世話にはならないと決めるのが賢明である。(満田 翔)
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2010年6月号掲載)