鍵を忘れた彼女は我が家のバルコニーから… 2024-8

付き合いの長い隣室の女性
いつもパワー全開の彼女
そんな彼女も背中が曲がり…

 連日の猛暑の中、いかがお過ごしですか。もう充分に夏を満喫したので、そろそろ秋に来ていただいても良いのですが、八月は始まったばかりです。付き合い方を工夫して、元気に過ごせる様に頑張りましょう。
 さて、この猛暑の中でも元気に過ごされている我がマンションの隣室に暮らしている女性の紹介をさせてもらいましょう。表札に出ている名字を知るくらいで、年齢も八十歳は越えているのかな程度の個人情報しか把握はしていませんが、分譲されてから三十五年間、私達家族に顔を合わせれば、声を掛けて下さっています。十年程前までは、ご主人もお元気でお二人共働いていらした様子でしたが、私の主人が亡くなったと同時期に、ご主人を亡くされていました。私もお悔みを申し上げなければいけないのに逆に、お仕事があるから大丈夫ね、息子さん達も立派だしねと励ましていただきました。
 その方と会話をする様になったのは少し衝撃的な事がきっかけでした。長男は産まれたばかりで、まだベビーベッドで寝ていた頃だったと思います。
 その日、仕事から帰った彼女は鍵を忘れて部屋に入れなくなりました。バルコニー側の窓は開いているからと我が家に来て、家の中を通らせて欲しいと言ったのです。私は身軽だから大丈夫よと制止する私を振り切り、素早い動きで猿の様に柵に飛び乗りご自分の部屋のバルコニーに移って行きました。
 その後も、彼女は常にパワー全開の笑顔満開で、声大きめで外で話して居ても内容は全て解ってしまいます。掃除も好きなので、毎日の様に玄関と窓柵を拭いています。私の知る限りバルコニーもピカピカです。話し掛けられると元気はもらえますが、話の切り所が難しいと息子達は言っています。でも、今日、隣のおばさんと話したと嬉しそうです。
 そんな彼女も、背中が曲がって来ました。私から彼女へもパワー注入したいと思います。
集合住宅管理新聞「アメニティ」2024年8月号掲載