二重床(フローリング)の遮音性能の話-その5(2013年1月号掲載)

二重床(フローリング)の遮音性能の話-その5-

遮音床の性能をきちんと生かす施工方法

前回は二重床の特徴と、特徴を踏まえた⊿(デルタ)等級による床材の選び方を説明しましたが、どんなに高性能の遮音床システムを選んでも、現場での施工方法により遮音性能が失われてしまう事があります。

 

性能を落とすダメ工法

その(1)際根太工法
最も遮音床性能を失わせる工法が、二重床を組む際に床下で壁と二重床を木材で固定してしまう工法です。以後、ここでは、『際根太工法』と呼びます。この『際根太工法』は、二重床の性能を約3ランク落とします(弊社試験室での検証結果)。

例えば、⊿LL‐4の二重床を使用しても、『際根太工法』施工後の性能は⊿LL‐1になってしまいます。

一見、性能がダウンするのはあたりまえの様に思われますが、現場ではあまり注意されず、施工もしやすいことから『際根太工法』で二重床を組む例が多く見られます。

その(2)フローリングと幅木を接触させる工法
続いて性能を落とす施工方法が、フローリングと幅木を接触させる施工です。この施工をした場合、二重床の性能は約2ランクダウンします(弊社試験室での検証結果)。
以上が、代表的な性能を落とす施工例です。

理想的な施工方法

それでは、どのように施工するのが良いのでしょうか?

それぼど難しいことではありません。二重床と建物の壁との間にほんのわずか隙間をとればいいのです。

前記2つのダメ工法は、床と壁が際根太や幅木を通して接触しているため、床に加わった衝撃が壁に伝わり、さらに壁を通してスラブに伝わり騒音となります。隙間があれば衝撃が伝わらず、騒音にならないのです。

幅木とフローリングに隙間をあけると「手抜き工事に見える」とか「隙間にゴミがたまる」などの意見をお客様から頂く事がありますが、どうか隙間の意味を理解してください。どうしてもゴミが気になる場合は、ゴミが入りにくい幅木にするなど、対応する方法はあるのです。

施工方法により遮音性能が悪くなった部屋は、最悪の場合床工事のやり直しになってしまい、そのままにすれば、その部屋で暮らす方が音のクレームを受ける可能性が高くなります。
以上の様に、床に高い遮音性能を求める際には、正しく遮音床システムを選ぶだけでなく、きちんと性能を発揮できる工法で施工する事が重要なのです。 (つづく)

あけましておめでとうございます。

「二重床(フローリング)の遮音性能の話」を連載している竹村工業(株)ジャストフロアー事業部事業推進リーダーの竹村です。
マンションに住む方にとって、上下階の音問題は非常に深刻かつ重要な問題にも関わらず、間違った情報・いい加減な対応により、お客様が悲しむケースを、何度も目の当たりにしてきました。
私は、知識が有る事はもちろん、きちんと説明・対応をし、お客様の希望に答えるのが「プロ」と思っていますが、あまりにも遮音に対して知識もなく、対応の悪い業者が見られます。
微力ではありますが、本紙連載を読まれたお客様(住戸に実際住まわれている方)に、現状や情報をお伝えし、住戸に住んだ後、音問題により悲しい思いをするリスクを少しでも減らせられたらと思っております。

(2013年1月号掲載)