マンション関連補助金の動向 2020年度概算要求より:2019年11月号掲載
8月、各省庁よりだされた2020年度予算の概算要求が締め切られた。総額約105兆円規模となる予算の中身について、現在査定が続いている。その中には、管理組合にも関係が深い事業が各省庁から提出されている。
国土交通省
国土交通省は、住宅局の重点施策として「老朽化マンション対策」を掲げており、以下の3事業に予算要求している。
【老朽化マンション再生モデル事業(20億円・新設)】
同事業は新設された事業で、今後急増が見込まれる老朽化マンションについて、再生検討から建替え等までの課題を解決する先導的な取組みを国が直接支援することにより、老朽化マンション再生のモデルを構築し、その促進を図るもの。
老朽化マンションの再生を支援するコンサルタント等の民間企業、団体が補助の対象で、2025年度までに、マンションの建替え等の件数を500件以上とすることを目標としている。
【マンション管理適正化・再生推進事業(2・75億円)】
同事業は、マンションの管理適正化・再生推進に向け、課題の解決に取り組む管理組合等の活動を後押しする取組みを支援することで、それらの成功事例・ノウハウの蓄積等を通じ、全国マンションの共通課題の解決及び今後増大することが予想される老朽化したマンションの課題解決の環境整備を図る。
【長期優良住宅化リフォーム推進事業(45億円)】
同事業は、良質な住宅ストックの形成や、若者による既存住宅の取得環境の改善、子育てをしやすい環境の整備等を図るため、既存住宅の長寿命化や省エネ化、三世代同居など複数世帯の同居の実現等に資するリフォームに対する支援を行う。
同事業には、通年(今年度は4月10日~11月29日まで)で申請できる「通年申請タイプ」と、期間を限って募集が行われる「事前採択タイプ」があり、今年度から、「事前採択タイプ」に「良好なマンション管理」が加わった。一定の要件を満たす長期修繕計画を作成するマンションで、「良好なマンション管理に対応する先導的な取り組み」を実施するものは、採択後、良好なマンション管理対応工事に要する費用等が補助対象となる。
今年4月10日から5月17日までに募集が行われた「良好なマンション管理」では、4事業者から10件の応募があり、そのうち、1事業者3件の提案が「良好なマンション管理に寄与する先導的な取り組み」として評価されている。
今回、適切と評価された提案は、大規模修繕工事において足場の必要な複数の工事内容を、高耐久仕様で実施することで、工事後の修繕周期を16~18年に変更した。また、30年~40年(建物竣工から60年)にわたる長期修繕計画において、一時金の徴収を伴う様な、修繕積立金の不足が発生しないよう、マンション全体の大規模修繕の回数を1回減らすことにより、費用を2割程度削減する提案であった 。
なお、今後、良好なマンション管理に向けて 期待したい取組みの方向性として、「事前採択タイプ」を審査する委員会では、「合意形成のプロセスなどを含め、一般的なマンションに水平展開が望めるようなフィージビリティ(実現性、実現可能性)を明示することが期待される。」としている。
環境省
【高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業(92・5億円の内)】
同事業は、既存住宅について、一定の省エネ効果(エネルギー削減率15%以上)が見込まれる高性能な窓や断熱材等の高性能建材導入に係る経費の一部を補助する。
昨年度事業では、公募が一次、二次と2度行われ、一次公募では集合住宅全体での改修の公募も行われた。昨年度公募の状況は別表を参照。
同事業では、従前、戸あたり150万円を上限として、管理組合全体で公募できたが、その後戸あたり15万円に規模が縮小され、また管理組合全体で公募できる機会も少なくなっている。
しかし、高経年マンションのエネルギー環境の改善は喫緊の課題で、その対策として窓の改修は大きな効果をもたらす。例え規模が縮小されても、補助金の存在が、合意形成を後押しする効果もあるため、積極的に活用を考えたい。
経済産業省
【次世代省エネ建材の実証支援(595・3億円の内)】
同事業は、既存住宅で省エネ改修の促進が期待される工期短縮可能な高性能断熱材や、快適性向上にも資する蓄熱・調湿材等の次世代省エネ建材の効果の実証を支援するもので、高性能建材導入にかかる経費の一部を補助する。
昨年の同事業では、一次、二次公募に計278件の申請が寄せられ、これらを対象に、学識経験者を含む関係分野の専門家で構成された審査委員会で定めた審査基準に基づき、審査が実施された。結果、補助対象事業250件について交付決定が行われた。
(2019年11月号掲載)