マンション管理費等滞納対策を教えて!
Q
私が管理組合理事長をしている団地では、管理費等の滞納をしている組合員がいます。滞納解消のための交渉や訴訟をしたいと考えているのですが、その組合員とは連絡がとれず、数ヶ月前からその居室に誰も住んでいる様子がありません。滞納解消に向けて、管理組合としてどのような対応をとればよいでしょうか?
管理費等滞納対策
「行方不明」「相続人存在」「相続人不存在」の場合の対処方法
A
まず、基本的な話ですが、管理費等の支払義務は、区分所有者が負います。誰が区分所有者なのかは、不動産登記簿謄本(不動産全部事項証明書)を取得して、居室の所有者名義を調査してください。管轄の法務局にて、誰でも取得できます。
その所有名義人に連絡が取れない場合を大別すると、①行方不明、②死亡して相続人が存在、③死亡して相続人が不存在、の3パターンが考えれます。以下、この3パターンの対処方法をご説明します。
まず、所有名義人が行方不明のときです。このときは、まず住民票等を取り寄せて、現住所を調べてください。ただし、住民票等は、重要な個人情報が記載された書面ですから、原則本人しか取得ができません。管理費滞納の事情を説明して、相応の資料を提示すれば、役所が応じてくれる場合もありますが、相応の労力が必要となります。この点、弁護士が滞納管理費等の請求のご依頼を受けた場合は、弁護士が職務上の権限として、比較的容易に取得することができます。住民票等を取得して、現住所が判明すれば、そこへ督促をするなどして交渉を進めたり、訴訟提起することになります。しかし、住民票上の住所が不在の居室のままであるケースでは、結局所在をつかめません。その場合は、住民票上の住所である居室を住所地として訴訟提起します。裁判は、相手方(被告)に訴状が送達されないと進められません。住所地に不在の場合は、訴状の送達ができません。その場合は、公示送達の申立をして、所在不明である旨の報告書を提出します。公示送達とは、被告の所在が不明な場合に、裁判所の掲示板等に訴訟提起があったことを公示して、一定期間(2週間)経過後に、訴状が送達されたものとみなされる制度です。この手続により、裁判を進めることができ、通常は被告の欠席裁判で、管理組合(原告)が勝訴します。
次に、名義人が死亡していて、相続人が存在するときです。このときは、戸籍等を取り寄せて、相続人を特定します。通常、相続人を特定するためには、相当数の戸籍の取得が必要であり、取り寄せ先の役所も複数になりがちなため、取得にはかなり労力が予想されます。戸籍についても、弁護士であれば職務上の権限として、比較的容易に取得することができます(それでも必要数揃えるには一定の時間がかかります)。相続人を特定できましたら、その相続にと交渉するか、訴訟を提起することになります。
最後に、名義人が死亡していて、相続人も存在しないときです。戸籍等を調査しても、相続人がいないときや、全ての法定相続人が相続放棄をしているときがこれにあたります。このときは、家庭裁判所へ相続財産管理人選任の申立をします。相続財産があれば、そこから回収できますが、通常、居室以外にめぼしい財産がない場合が予想されます。その場合、居室の売却を相続財産管理人が行い、その売却代金もしくは買主から滞納管理費等を回収することになります。
回答者
NPO日住協法律相談会専門相談員
弁護士 内藤 太郎
(集合住宅管理新聞「アメニティ」411号掲載/平成28年11月5日)