飼育を容認する場合は規約の改正を

ペットと標準管理規約

マンション生活で多いトラブルの一つがペットの飼育問題です。

時代の変遷の中で、犬・猫などのペットに対する考え方も変わり、規約を改正してペットを容認したマンションがある一方、あくまでペットの禁止規約を尊重して例外を認めないところ、規約上は禁止だが、ペットクラブを組織したり、近隣住戸の承諾を条件に黙認しているところ、などさまざまです。
また、一概にペットといっても、その種類と大きさ、などによって飼育条件や飼育設備も異なりますし、好き嫌いの感情面での問題もあります。猫が好きな人は隣戸で猫を飼っていても気になりませんが、嫌いな人にとっては、毎日が悩みの種です。このように、マンションという共同生活の中でのペット問題はかなり深刻で、且つ永遠の課題でもあります。

1月に国土交通省が発表した「マンション標準管理規約」によれば、ペット飼育についてコメントを付しておりますので、あらためてご紹介しながらペット問題を考えてみたいと思います。

盲導犬や介助犬等はペットではない取り扱いを

「標準管理規約」では、『犬・猫等のペットの飼育に関して、認める、認めない等の規定は規約で定める事例』としており、また『手続き等の細部の規定は使用細則等に委ねることは可能』としています。
ペットを認める場合、まず動物の種類や大きさ、数など、無制限でよいのかという問題があります。ヘビやカメなどの爬虫類、臭いや毒性の強い動物などはどうするか、ということも論議しておかなければならない問題の一つです。また、飼育者のマナーや飼育ルール違反者の対策なども重要な課題です。

同コメントでは、飼育を認める場合には、

1.動物等の種類及び数等の限定、
2.管理組合への届け出又は登録による飼育動物の把握、
3.専有部分での飼育方法、
4.共用部分の利用方法、
5.ふん尿の処理等の飼育者の守るべき事項、
6.飼育に起因する被害等に対する責任、
7.違反者に対する措置、

等々の規定を定める必要がある、としています。
また、盲導犬や介助犬等についてはペットでない取り扱いが必要としています。ペット飼育を禁止しているマンションで、すでにこのことを規約(生活協定)に明記している管理組合もあります。

ペットの飼育を禁止する場合

(ペット飼育の禁止)
第○条 区分所有者及び占有者は、専有部分、共用部分の如何を問わず、犬・猫等の動物を飼育してはならない。ただし、専ら専有部分内で、かつ、かご・水槽等内のみで飼育する小鳥・鑑賞用魚類(金魚・熱帯魚等)等を、使用細則に定める飼育方法により飼育する場合、及び身体障害者補助犬法に規定する身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬及び聴導犬)を使用する場合はこの限りではない。

ペットの飼育を容認する場合
(ペットの飼育)
第○条 ペット飼育を希望する区分所有者及び占有者は、使用細則及びペット飼育に関する細則を遵守しなければならない。ただし、他の区分所有者又は占有者からの苦情の申し出があり、改善勧告に従わない場合には、理事会は、飼育禁止を含む措置をとることができる。

同コメントで、ペット飼育を禁止する場合と容認する場合の規約の例示がありますので原文のまま以下ご紹介します。

 

これからの課題はペットの飼育設備か

同コメントが示すように、規約等のソフト面での整備はかなり進められてきておりますが、今後はペットを飼育する場合の設備面での対策も重要視されてよいのではないでしょうか。例えば、エントランスの共用部分に「ペットの足洗い場」を作るとか、専有部分には「ペットの専用トイレ」、「ペットの毛を集塵したり臭いを削除する清浄器の設置」、「ペットが毛づくろい出来るサンルーム」、「ペットの水飲み場」など、人とペットが「共生」出来る環境作りが必須といっても過言ではありません。
しかし現実にはこの対策はほとんど進められておらず、「ペット可」を売りに分譲しているマンションに取材したところ、設備面での対策をしているところはほとんどなく、エントランスの足洗い場程度が唯一の「ペット用設備」というのが実情でした。