マンションの機械式駐車場/維持・管理の課題(2013年7月号掲載)
機械式駐車場は、限られた敷地内に効率よく駐車できるため、設置しているマンションも多いが、「一般社団法人駐車場管理支援機構・駐車場相談室」へ寄せられる相談で、マンションの機械式駐車場の相談が多数を占めているという。そこで、同相談室に寄せられた相談からマンションの機械式駐車場の維持管理の課題を特集する。
マンションの機械式駐車場の現状と課題
平成15年度のマンション総合調査によれば、平成2年以降、機械式駐車場を設置する割合が高くなっており、新しいマンションほど機械式駐車場が設置されている。
機械式駐車場は適切に管理することで20年前後は使用可能(設置場所による)とされており、平成以降設置された機械式駐車場が更新時期を迎え、新たな問題にもなってきている。
機械式駐車場は、エレベーターのように定期点検が義務付けられていないが、機能を維持するためには、定期点検と中長期的なメンテナンスが必要となる。
さらに、使用開始から15年~20年を目安に、施設を更新(入れ替え)するか、大規模修繕により延命を図るかなど、その費用も併せて、施設の「総合診断(劣化診断)」を行う必要がある。
定期点検
定期点検のため、保守会社と管理組合間で締結するのが「保守契約書」。契約により、2、3ヶ月毎に点検が行われ、点検後、保守会社から管理組合へ「点検報告書」が提出される。
点検費用は自動車1台数千円×台数で算出されることが多いが、管理組合には機械式駐車場に関する情報が不足しているため、言われるまま契約するケースが多い。
しかし、必要以上の点検項目や点検頻度により点検費用が割高になっていることもあるため、点検費用に疑問のある管理組合は、「保守契約書」の内容が妥当なのか、確認することを同相談室では呼びかけている。
中長期的メンテナンス
施設設置から10年を過ぎる頃から各機械装置の老朽化が進むため、大型部品の交換等が必要になってくる(塗装の塗替、モーターの交換等)。
このとき必要なのが、機械式駐車場の「長期保全工事計画書」である。
同計画書はメーカーが作成し、メーカー各社の保守実績や経験に基づき、10~20年程度の使用期間中に必要な部品毎の交換時期や概算費用、修繕方法などをまとめたもので、大型部品の交換が必要となる場合もある。したがって、費用は定期点検より高くなる。
同計画書の存在が管理組合に伝わっていないこともあり、この場合、管理組合にある日突然高額な請求が来て驚くということが起きている。
同計画書は機械式駐車場の使用説明書と同時に管理組合に渡すメーカーもあれば、求めがあれば渡すなど対応が様々のため、同相談室では「長期保全工事計画書」を必ずメーカーに請求するよう管理組合に勧めている。
さらに同相談室では、マンションの長期修繕計画には、機械式駐車場の修繕計画が含まれていないこともあるため、「長期保全工事計画書」をもとに「駐車場修繕計画」と「資金計画」を作成し、マンションの長期修繕計画の中に「駐車場修繕計画」も含めるよう勧めている。
また、管理組合では理事の輪番制を採っているところが多く、理事が定期的に変わる。そのため機械式駐車場の問題が引継がれないことから、「駐車場専門委員会」等を設置して情報を蓄積し、メーカーや保守会社と対等に話し合える体制を築くよう、同相談室ではアドバイスしている。
(2013年7月号掲載)