管理費等滞納問題を再考する③管理費等の重要性をどう理解・認識するか(1)
管理費等の重要性をどう理解・認識するか(1)
滞納履歴の正確な把握を!(1)
管理組合の運営に無関心という前に、管理組合の存在そのものに無頓着である組合員が残念ながら存在する。そしてマンションという集合住宅に居住している住生活の特殊性、すなわち、区分所有者であるという自覚とそれに伴う責任感、すなわち共有部分の共同管理責任が希薄になっている。管理費等の滞納問題がこういう組合員に生じた場合、支払いの催告・督促を繰り返しても、効果がなかなか期待できない。では、理事長はどのように啓発し、解決方法を開拓できるか。
まず、滞納金額が少ないうちに解決することが先決であることは誰しも認めるところであろう。
しかし支払い能力がある場合と支払能力のない場合(さまざまのケースがある、次回論述する)とでは、その後の対応は異ならざるを得ない。
支払能力がある場合の対応
管理費等の納入義務の重要性をまったく認識していない区分所有者に対しては丁寧にその重 要な論理を根気強く説明すれば、解決できる予測はつくだろう。理事長は手をこまねかずに、連絡を蜜に、電話・訪問・文書等で、催告することが大切である。放置しないことが大事に至らない第一歩である。3ヵ月以内に解決するのが基本となろう。
1.わかりきったことであると思う前に、何のために管理費等を納入するのか、何のために使用されているのかを改めて説明し、専有部分とどんな関係にあるのか入居時の原点を思い起こしてもらって、納得させることである。滞納額は高額になると支払い能力があっても、誰しも支払いが億劫になるものである。そのような事態にならないように、毎月、規則正しく催告することである。場合によっては、面談する。
2.滞納が3ヶ月を超えた時点で、単に催告におわることなく、今後、長期化をまねかないために試みておくこととしては内容証明郵便による催告書に法的措置(註3)を検討する管理組合の姿勢を予告しておくのが妥当な方法であろう。支払能力のある区分所有者は通常、この段階までで、解決の目途がつく。海外出張等で事務処理が遅れることがあっても、基本的に心配ない。
3.何らかの要因・事情で、1年以上の長期滞納に発展してしまった場合は、未払い管理費等請求の訴訟を提起し、確定判決(債務名義)をえて、強制執行(註4)をする知識を備えておくとよい。140万円以下の場合でも、強制執行の申し立ては簡易裁判所ではなく地方裁判所となる。
滞納管理費等の請求が5年の時効にかかるとの最高裁判決(平成16年4月23日)が出た現在、理事長は区分所有者の滞納履歴を掌握しておく必要がある時代である。取り敢えず、時効中断をしておくために、提訴し確定判決を得ておく必要がある。管理組合財産の損失を見過ごさないようにしなければならないのは理事長の当然の責務である。
4.別の方法として訴訟を回避して、管理組合は法人格の有無にかかわらず、法律上当然に有する先取特権(区分所有法第7条1項)の実行を考えることもできる。
(註3)未払い管理費等を法的手段により、強制的に徴収すること。管理組合は法人格の有無に関係なく、当事者適格を有する(区分所有法第26条4項参照)ので、債務名義を得るために、裁判所に未払い管理費等請求の訴えを提起すること。現在、請求金額(訴額)140万円以下 なら簡易裁判所に、これを超える場合は地方裁判所に提訴する。少額訴訟手続きができるのは60万円以下。訴訟手続きについては、それぞれの管轄の裁判所に相談窓口があり、書記官が丁寧に詳細な説明を納得いくまでしてくれるので、訴訟になれない理事長であっても不安なく進めることができる。
(註4)民事執行法の規定による競売により、売却代金から滞納管理費を受けとる。
(2005.10)