管理費等滞納問題を再考する⑮管理組合運営の当事者性を発揮し、滞納問題を理事会で常に議題にしよう!

管理組合運営の当事者性を発揮し、滞納問題を理事会で常に議題にしよう!

はじめに

一般的に滞納問題は管理組合の共通の悩みであるにもかかわらず、有効な対応策がマニュアル化されない問題分野である。なんといっても、長期化させないように早期解決が大切だ。

これまで14回(アメニティ第275号~288号)にわたって管理費等滞納問題について管理組合理事会が主体的にどのように対応し、解決していくかについて、特に理事長のリーダーシップが重要であることを強調し管理組合自身の当事者性に視点をおいて再考した。

 

1.連帯し、繊細な感覚で対応したい

 

第14回において、「いかなる事情・理由があるにしろ組合員が管理費等を滞納することは区分所有者としての義務違反である」(区分所有法第1節第6条1項参照)と書いた。そして「義務違反に対する措置」(区分所有法 第7節第57条~第60条参照)による論理構成の選択にまで言及した。

滞納金問題が解決できないという現実は、管理組合の信頼性と結束力を弱くする。理事長は、この点から個人的に負担が大きい。理事会で理事長の重荷を軽減しよう。それには理事会で、毎回、滞納問題を審議することが大切だ。

ただし、理事会は滞納者の個人名を守秘義務にすることが鉄則だと心得ておく。マンションというコミュニティにおいて、滞納者の氏名の公表は個人情報保護法が後をひき、問題解決にマイナスであるからだ。

 

2.管理組合の会計に関心をもつ

 

定例理事会では理事長あるいは会計担当理事から、毎回、「今月の滞納問題」を報告事項として、議題にすること。議題に掲げることは滞納者の状況把握を早期に対応する基本姿勢を確立するための最良の近道である。管理者として、理事長がひとりで難問たる滞納問題を抱え込む必要はない。滞納している事情・理由等の情報を収集するにも理事会全体でアンテナを張っておく方が何らかの適切なニュースを得られる確率が高い。最適な対応策はそこから生まれ、早期解決の道が開ける。

理事の任期が1年あるいは2年であるという管理組合が多数であろう。滞納問題を認識しないまま理事の任期をおえ、次期の理事に交代し、早期解決が鍵である滞納問題の解決を難しくした事態は少なくても回避できる。理事会で、わがマンションの管理費等問題はどんな状況であるのか、知っておくことが大切。理事各自が管理組合会計に無関心であってはならない。

 

3.基本的な知識を共有しておく

 

滞納問題解決に当たり、特に2点が共有知識として、重要であるので、指摘しておきたい。

第1、管理費等の滞納金は普通に請求していても定期給付債権として、5年で時効にかかるのだということを全理事が認識しておこう。これは2004年(平成14年)4月23日の最高裁判決があったからで、管理組合にとっては緊張を要する。

滞納者に対しては、長期化しないように対応することは原則、しかし、長期化してしまった場合、時効中断を目的とする民法第147条の規定を行使する。時効の中断にはこれしか方法はない。基本的なこの法的知識だけは全理事が共有しておこう。

第2、同じく2004年4月から、簡易裁判所に訴訟提起できる金額が140万円に、少額訴訟制度を利用するのは60万円に引き上げられていること。簡易裁判所を利用する基本的知識を共有されたい。

 

4.最後に

 

国土交通省によるマンション総合調査(平成15年度)によると、3ヶ月以上の滞納者がいる管理組合は32.1%、6ヶ月以上が20.4%、1年以上が18.2%にも上っている。貴管理組合においてもいつ滞納問題で悩む事態に直面するかもしれない。この紙面で再考した拙稿がいささかの参考になれば幸いである。

15回にわたってお付き合いいただき、ありがとうございました。

(2006年12月号掲載)