自分を大切にしようー人生100年時代を健康に生き抜くために②
自分の体を知る
今月は「自分の体を知る」です。特に今は痛み等の症状が現れていなくても、何らかの数値上の変化を読み取ることで、将来起こりうる病気の兆候を知ることができます。
最も確実なのは健康診断の血液検査のデータですが、多くの指標のひとつひとつの意味を理解し、その変化を記憶するのは容易な事ではありません。
では、もっと簡単な指標はないのでしょうか。
それは体重です。
体重の変化を記録する
体重ならば、体重計に乗るだけでわかります。最近はスマートフォンのアプリを利用すれば、記録も楽になります。
では、なぜ体重なのでしょうか。
減り続ける基礎代謝
表1は厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年版」にある年代別基礎代謝量です。基礎代謝とは、生きていくために最低限必要なエネルギーのこと。男性、女性ともに、10代~20代あたりをピークに、徐々に基礎代謝量が減っていることがわかります。
一方で、各年代の体重を平均化した参照体重は年代が上がるにつれて増えています。基礎代謝が減り、体重が増える。これは多くの場合、体脂肪量の増加です。
基礎代謝が下がっているのに、若い頃と変わらない食生活を続けていれば、使われなかったエネルギーは体脂肪としてお腹の周りや血管等に溜まり、結果、体重も増え続けていきます。若い頃と比べて運動する機会が少なくなっていれば、なおさらです。
そして、BMI【体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)】が25を超えると、血管障害を始めとした健康上の障害が起きやすくなるのです。
だから体重の変化に注意して、生活習慣を変える意識付けを行いたいのです。
減る場合も注意
これまでは、体重の増加を意識してきました。では、体重が減るのはいいのでしょうか。
まだ若く、体重が減っても活動的に動ける場合はそれほど心配ないのですが、高齢になり、特に減量してないのに体重が減っていたという場合は要注意です(目安として半年で2㎏以上)。この背景には、悪性腫瘍(がん)、胃潰瘍等の消化器疾患、うつ病等の精神疾患が隠れている場合があります。表1を見ても、75歳以上の後期高齢者は体重の減少傾向が顕著にみられます。急激な体重減少は、病気の可能性にも要注意です。
体重の変化を見るという一見単純な方法ですが、増え続ける、あるいは減り続けるのは理由があります。その理由を考え、生活習慣の改善に役立てていきましょう。
取材協力:生活習慣ヘルスコーチ/作業療法士 小幡茂人
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年11月号掲載)