口の健康を保つ②
歯周病になりやすい高齢者
65歳以上の人で、全く歯の治療をした痕跡の無い人は少ないそうです。
総入れ歯の人もいれば、インプラントの人、歯の一部にブリッジを入れるなど、何らかの治療をしている人が多数派です。
このことが口内環境にどのような影響をもたらすのでしょうか。
これらのモノは傷つきやすく、かつ汚れも付きやすいため、きちんとした手入れができていないと、そこで菌が繁殖しやすくなります。
この菌が、歯と歯茎の隙間から侵入し、歯肉で炎症を起こす歯周病の原因となります。
急性の炎症により、腫れや痛みが発生したことで、歯の異常に気が付き、早めの治療が可能となりますが、特に痛み等もないまま、あるいは症状があっても治療を怠った場合、口内での炎症は慢性化していきます。
歯周病菌がもたらす様々な病気
慢性化した歯周病は、歯のぐらつきの原因となるほか、そのまま放置しておけば、徐々に周りの組織を破壊していくことは知られています。
しかし、影響は口の中だけでは済みません。血液の流れに乗った歯周病菌は、体内の様々なところに運ばれ、体の各所で炎症を起こす原因となります。
特に高齢者になると、体の抵抗力も弱くなっている人も多いため、糖尿病等の基礎疾患のある人にとって、歯周病は大きなリスクとなります。事実、糖尿病の人が、歯の手入れを行い、口腔環境をよくするように努めたところ、糖尿病に関する数値が改善したということもあるようです。
余談となりますが、赤ちゃんには虫歯や歯周病の原因となる菌はありません。では、どこから原因となる菌が来るのでしょうか。ほとんどの場合、親の口からもたらされます。ですから、赤ちゃんの離乳食で、親の口を介して離乳食を与えると、虫歯や歯周病の感染機会を増やすだけですので、そのようなことは避けましょう。お孫さんのいる家庭でも同じことです。
歯が抜けると老けて見える?
また、歯が抜けると老けて見えるということが起こるようです。
これは、歯が抜けることで噛み合わせが悪くなり、食事の際によく噛むことができにくくなった結果、唾液が出にくくなり、食物の消化に影響を与えるとともに、唾液が出ないことで口の中が乾きやすくなるのですが、この「よく噛めない」ことと見た目がどう関係するのでしょうか。
「骨密度」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょうが、総入れ歯の人と、そうではない人を比較した場合、頭蓋骨の骨密度に違いが現れます。「よく噛む」ことが、骨への刺激となり、それが頭蓋骨の骨密度を増やすことになるようです。逆に、よく噛むことができない人は、骨への刺激が少ないため、骨密度が下がり、それが顔のたるみ等の原因となり、結果老けて見えることにつながるようです。
日常的に手入れを
これらのことを避けるためには、日常的に歯の手入れをすることが大切になります。手入れの方法についてはまた次回。
【取材協力:日本橋三宮デンタルケアクリニック99 院長 三宮 恵子】