住戸内のアスベスト含有建材の処理方法(2019年4月号掲載)
Q
マンションで住戸の内装リフォームをしていますが、内装業者からお風呂や洗面室の天井板がアスベスト含有建材であるので、解体撤去の追加費用が掛かるといわれました。西暦1990年に建設されたマンションですが、その頃にはまだアスベスト含有建材は使われていたのでしょうか?また、アスベスト含有建材の処理はどのようにすれば良いのでしょうか?
A
建物に使われている建材には、ある時期アスベストを含有していたものが多数確認されています。住戸の内装材も例外ではありません。アスベストが含有していた内装材は、ボード類、天井吹付仕上材、ビニル系床材が主です。
ボード類で仕様頻度が高いのはスレートボード(耐水性と不燃性があり、主に浴室や洗面室など湿気の多い部屋の天井板や台所等の火気使用室の壁(タイルや塗装の下地)に使われている・画鋲が刺さらないくらいに固い)、石膏ボード(不燃性があり、壁や天井でビニルクロスの下地ボードとして使われている・画鋲が容易に刺さる)、ケイ酸カルシウム板(洗面室や廊下の天井板として使われている・画鋲が強くさせば刺さる)、ロックウール吸音板(白色で表面が虫喰い状に穴があいた吸音天井ボード・画鋲が容易に刺さる)などが上げられます。
天井吹付仕上材は吹付ひる石ー別名バーミキュライトー(無数の凹凸があり手で触るとポロポロはがれ落ちてくる天井吹付材)があります。
ビニル系床材はクッションフロア(エンボス模様のある長尺シート)やPタイル(30㎝角の固いビニル系床材)と一般に言われている合成樹脂床材があります。
これらの建材にアスベストを含有していた年代はスレートボードが2004年まで、石膏ボードは1986年まで、ケイ酸カルシウム板が2004年まで、ロックウール吸音板が1987年まで、吹付ひる石が1988年まで、クッションフロアは1990年まで、Pタイルは1987年までで、メーカーにより年代や含有の有無に差異がありますので、国土交通省・経済産業省が公表している石綿含有建材データベース(http://www.asbestos-database.jp/)を参照してください。
もしこれらのいずれかの建材を解体撤去や改修する際には以下の処置が必要です。
①工事受注者は工事部位の建材にアスベストが含有しているかを調べ、調査結果を発注者に説明し、公衆に見やすいように掲示する。
②発注者は上記調査費用の負担や必要な措置への協力をする。
③石綿含有建材の解体撤去作業者は保護具・保護着を着用し、作業場所はシートなどを敷いたり囲ったりし養生する。
④石綿含有建材使用部に設置されている設備機器を取り外す。
⑤石綿含有建材の湿潤化(=粉塵飛散防止)。
・ボードは水または湿潤剤を噴霧し湿潤化する。
・吹付材は湿潤剤を噴霧し湿潤化する。
・ビニル系床材は湿潤剤を噴霧又はHEPAフィルター付真空掃除機で吸引(場合により作業場を隔離し負圧排気装置が必要)。
⑥石綿含有建材の除去。
・ボードは原型のまま割らないように手ばらしする。
・吹付材は湿潤状態を保持しながら、スクレ─パーなどで吹付材を除去し、除去面の残留物は浸透性固化材を塗布し固化するかHEPAフィルター付真空掃除機で吸引する。
・ビニル床材は接着力が強く電動工具で剥がす事となり、湿潤剤を噴霧しながら又はHEPAフィルター付真空掃除機で粉塵を吸引しながら作業する。
⑦除去した石綿含有建材は「石綿含有産業廃棄物」として所定の梱包・区分・経路・処理場で処理する。
回答者:NPO日住協協力技術者
一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2019年4月号掲載)