Q&A うちのマンションは耐震ドアになっているの?(2020年6月号掲載)


設計事務所にマンションの大規模修繕の設計費用の見積を依頼しました。その際、見積依頼書に玄関扉を耐震扉への取替設計を含めましたが、一部の設計事務所から現地を下見したところ既に耐震扉になっていますので、この設計は対象外としてよろしいですか?という質疑が出されました。

築24年を過ぎているため、耐震玄関ドアではないであろうと考えていましたが、耐震ドアかどうかを外観から確認出来るのでしょうか?

 


耐震ドアとは、地震で建物にゆがみが発生し、それに伴い扉も変形した場合に扉が開閉出来なくなるのを防ぐ機構の付いた扉のことです。大きな地震が発生すると外壁がひび割れると共にゆがんでしまいます。その際、外壁に固定されている扉の周囲枠が外壁と共にゆがみ変形し、周囲枠が扉に接触し、扉を開けることが困難になり、居住者が閉じ込められてしまいます。

それを防止するために、扉枠が変形しても扉が開けられる機構を組み込んだ扉が耐震ドアです。尚、この機構により地震に耐えるドアになるのではなく、地震の変形に対応して開けられるドアと言う意味で「対震ドア」と扉メーカーで呼称しています。

では、その機構が外観から確認出来るか?ですが、この機構には2種類あり、1つは「対震丁番」によるもの、もう一つは「対震枠」によるものです。

 

 

対震丁番とはドアの吊り元で開閉時に回転軸となる丁番に特殊な機構を付加したものです。丁番は扉枠側に取り付けてある回転軸と扉側に取り付けられている回転軸の2つの回転軸を上下につないだもので、丁番の中央につなぎ目があり1~2ミリ厚のワッシャがはめ込まれています。対震丁番は、この上下の回転軸のつなぎ目に高さ1㎝くらいの筒状のカバーが付いていて、手で上げるとカバーが上下します。丁番の上側の回転軸の中にスプリングが内蔵され、このカバーで覆われている1㎝くらいの範囲を上下に伸縮するようになっています。この機構によって、扉が枠に擦れていても丁番部分が上下に可動する事により、摺れを軽減し、扉を開けることが出来るのです。よってこのタイプは丁番の中央付近に筒状のカバーが組み込まれている事から判別できます。

 

 

一方、対震枠とは、通常ドアの周囲枠と扉とは4ミリほどのすき間がありますが、対震枠は上部のすき間が7ミリ、戸先側(戸の開く方側)のすき間が12ミリ位に広くしてあります。すき間を広くすることにより、枠が変形しても扉との接触が少なくなり、開ける際にあまり抵抗にならないようにしたものです。よってこのタイプは扉の上部のすき間が7ミリ位ある事と、戸先側は12ミリのすき間があるのですが、そのすき間を扉の面材を伸ばして覆っているため、正面からすき間が見えなくなっている事です。

回答者:NPO日住協協力技術者
一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年6月号掲載)