サッシのガラスに鉄線が入っている箇所と入っていない箇所が混在しているのは?(2013年10月号掲載)

 マンションのガラスをペアガラスに交換しようと思いますが、既存のガラスには鉄線が縦に入っています。ガラス屋さんに鉄線入りのペアガラスはガラス代が倍近くなると云われました。周りの住戸を見ると、住戸により窓ガラスに鉄線が入っているところと入っていないところがあります。又、一部の住戸では同じ住戸の窓で鉄線が入っている窓と入っていない窓があります。ガラスを取り替える際、鉄線入りのガラスにすべき窓と不要な窓にはどのような基準があるのでしょうか?

 アルミサッシのガラスに線入(約5cm間隔に平行に鉄線が入ったガラス)あるいは網入(約2cm間隔に格子状に鉄線が入ったガラス)のガラスが使われる場合があります。建築基準法で規定された延焼(自宅から出火した際、窓ガラスが割れ建物の外に火が広がる事)防止の為です。鉄線入りガラスは熱せられガラスが割れても飛散脱落せず、炎が外部に吹き出しにくいからです。

 以前はご相談の線入ガラスも延焼防止ガラスとして認められていましたが、30年前(1983年)にその性能が期待できないと云う事で延焼防止ガラス対象外となり、現在は網入ガラスの方しか認められていません。ガラス取替の際は網入ガラスにする事が必要です。

 本題の網入ガラスにしなければならない範囲ですが、窓の位置が次の範囲に入る場合が対象です。

(1)道路の中心線から1階で3m以内2階以上で5m以内の範囲
(2)隣地境界線(隣地との地境)から1階で3m以内2階以上で5m以内の範囲
(3)同一敷地内の他の建物との外壁間中心線から1階で3m以内2階以上で5m以内の範囲
※緩和規定がありますが、基本は前記3範囲です。

 この範囲でガラスを取り替える際は、網入ガラスで取り替えないと違法建築物になります。同じ外壁面でも隣地境界に斜めに面して、隣地境界に接近している部位や、同一敷地内の他の建物が近くにある部位では網入が必要となり、一つのマンションあるいは住戸でも網入ガラスが必要な窓と不要な窓が混在する事が有ります。

 又、注意が必要なのは既存のアルミサッシの単板ガラスをペアガラスに変更すると、ガラスの重量が1.5倍から2倍になり、サッシの戸車の耐荷重を超え、戸車の磨耗・破損を早めてしまう場合が有りますので、確認が必要です。

回答者:NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2013年10月号掲載)