階段室やバルコニーを防水したら水溜まりが増えた(2015年12月号掲載)
Q
この度第2回目の大規模修繕を行い、半屋外の階段室やバルコニーに防水を施しました。その防水を行ってからバルコニーや階段室に雨天後水溜まりが目立っています。施工会社に是正を要求しましたが、建設時に床の勾配を十分取っていなかったのが原因で是正は不可能であるとの回答です。
防水工事前にはあまり水溜まりは見られなかったのですから建設時の勾配が悪いとは思えないのですが、如何でしょうか? ご意見をお聞かせください。
A
今までモルタル仕上だったバルコニーや階段の床に防水をすると水溜まりが増える事例は非常に多く見られます。これはモルタルは吸水性があるため雨が掛かってもモルタル内に浸み込んでしまい、少量の雨では水溜りが発生しないからです。一方防水材のウレタン樹脂や塩ビ樹脂は吸水性がほぼゼロのため、勾配の不良部や凹み部にすぐ水が溜まってしまいます。ある程度勾配があっても水の表面張力で盛り上がるように雨水が残留もします。このため、防水前と防水後では水溜り量が明らかに増えてしまいます。
この勾配不良や凹みを直せば、表面張力による残留水以外は改善されるはずですが、バルコニーの排水溝などは標準間口の住戸で溝の長さが7m位あり、溝の水下の深さが5cm未満位、排水口はバルコニーの左右どちらか片側しかありません。この間に勾配を付けるには50mm/7000mm=1/140の勾配を付ける事になります。現場での職人の手作業で取れる水溜まりが発生しない勾配は1/50位ですので、物理的に無理となります。また階段の勾配は縦方向(上り下り方向)の勾配をとっても先端にすべり止め(ノンスリップ)が突起していて水溜まりが出来てしまい、横方向(階段の幅方向)に1/50の勾配を取ると、階段の法定幅が900mm又は1200mmですので、左右の高さの差が18mm又は24mmとなり、躓きやふらつきの原因となってしまいます。
何とか勾配が取れるのは幅が1.2~1.8m位のバルコニーの床面です。よってバルコニーの床に水溜まりが出来る場合(表面張力による水溜を除く)は、施工会社に直してもらってください。
新築時にはバルコニーの両端に排水口を設け、溝の深さも深くする設計をしてもらいたいものです。又、防水材メーカーには吸水性のある防水材か表面張力の起きない(親水性)防水材を開発してくれることを期待します。
回答者:NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2015年12月号掲載)
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