コンサルタントのバックマージン(2016年2月号掲載)
Q
2回目のマンション大規模修繕を計画しています。1回目大規模修繕時から色々頼んでいるコンサルタントと管理組合に営業にきた複数の新たなコンサルタントから調査・設計・監理の見積もりを出してもらいました。その結果、1回目からのコンサルタントの見積に比べ新たに応募してきたコンサルタントの見積が半額くらいでした。
この結果から理事会で1回目のコンサルタントは今まで誠実に色々管理組合の助力になってくれたが、随分高い金額で業務をやっていたんだなと不評が出てきました。一方、理事の中には安い見積もりを出してきた一部のコンサルタントは施工業者からバックマージンを取っているという他の管理組合からの情報があるので除外しようという意見が出ましたが、他の理事はバックマージンはどの業界でも行われている慣行なのだから問題にする必要は無いとの意見も出て来ました。コンサルタントのバックマージンは一般的なのでしょうか? 又コンサルタントによりその費用に大きな差があるのは何故でしょうか?
A
以前のQ&Aコーナーでも触れましたが、修繕設計のコンサルタントは一般的に建築設計事務所が大半です。
建築設計事務所は発注者(管理組合)の委託によりその代理人となって発注者の為に公正かつ誠実に業務を遂行するものです。そのように建築士の職責として建築士法で決められています。
バックマージン(あるいはリベート、キックバック)とは「売上割戻金(例えばメーカーが小売店に対し、自社商品の販売量に応じ決められた割合の金額を小売店に払い戻す)」の意味と「賄賂(自分の利益になるよう取り計らってもらうなど、不正な目的で贈る金品)」の意味があります。
「売上割戻金」はいろいろな業界で行われているかも知れませんが、「賄賂」は一般的な慣行とは言えません。どちらの意味においても設計事務所がバックマージンを受領して、発注者のために公正かつ誠実にその業務を遂行出来るとは思われません。
コンサルタントは工事監理業務において、施工会社が設計書通りに施工を行っているかを監理するものです。
バックマージンをもらって適切な監理が出来るでしょうか?
又、コンサルタント費用はその業務にどのような技術者がどのくらい手間を掛けるかにより費用に差は出て来ます。
しかしあまり大きな差(2倍近い差)が出るのは、どちらかが過剰な或いは意図的に低額な見積をしていると考えられます。
国交省の告示15号で設計事務所の報酬の基準が定められ、業務を担当する建築士の人件費(=直接人件費)の日額或いは時間額に業務に掛かる日数或いは時間数を掛け算出し、それに設計事務所を維持していくための諸経費を加算して算出します。
直接人件費の日額に年間実働日数(標準200日)を掛けるとその技術者の年収相当となります。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査の25~29歳の一級建築士の平均年収(所得税・社会保険控除前)は560万円(日額28000円)を目安に判断してください。
又、諸経費は同告示で略算法として直接人件費の1倍としています。設計事務所は人件費と事務所維持の諸経費が売上原価であるため、販売業や製造業のように種々の仕入れ原材料等が売上原価に発生しないため売上に対する諸経費率は高く見られる事が多いようですが、業種による経理構造を理解することが必要です。
回答者:NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2016年2月号掲載)