超高層マンションの修繕費(2016年4月号掲載)
Q
超高層マンションの管理組合理事です。長期修繕計画を管理会社で見直していますが、計画修繕工事費は一般的なマンションと同等の工事単価で計上しているとのことでした。修繕積立金設定の根源となる長期修繕計画の修繕費用が大きく異なると将来の大規模修繕工事等で資金不足になってしまうことが危惧されます。
超高層マンションと一般マンションで修繕費用には違いはないのでしょうか?
A
近年湾岸地域などに超高層マンション(一般的に高さ60m―20階建て程度―を超すマンション)が多く建てられてきています。この超高層のマンションの一般マンション(超高層でない低・中・高層マンション)と修繕工事での大きな違いは、その高さ故に通常の足場(枠組足場)の設置が困難であることです。
構造計算をし補強すれば通常の足場の設置は可能ですが、足場組立に2カ月以上かかり、上層での強風の影響や材料の荷揚げでかなりの困難をきたします。このため超高層マンションの大規模修繕はゴンドラ(上部からワイヤーで吊したり、壁面に昇降用レールを設置し昇降装置により昇降する手摺付作業床)を使って工事が行われます。
ゴンドラは通常の足場のように壁面全体に連続せず、1段の作業床を移動しながら工事場所に行き工事を行うため、使用中の作業員に独占され他の作業員や監督員が使用出来ません。また、ゴンドラを使用して工事場所から他の工事場所や資材置場のある地上階への移動に多くの時間を費やし、作業効率が低下します。
また、ゴンドラの仮設費用は通常の足場より一般的に高額になります(作業効率を上げるため複数基設置したり、他の面の外壁に設置替えしたりするため)。また、超高層マンションは高層階では風が強く、作業中止しなければならない日が一般マンションより多くなります。
このような事から、仮設工事費が高額になり、外壁面で行う各工事も作業効率低下のため工事単価が高くなり、工期も長期化し高額になってしまいます。
また、超高層マンションは建物の高さの問題だけではなく、共用施設や高度な設備が多いことも修繕費増加の要因となっています。以前のマンションの共用施設や設備と言えば集会室や公園、給排水ガス設備、電灯・電話設備、TV共聴設備程度でしたが、超高層マンションではプールやサウナ、パーティールーム、ゲストルーム、展望ラウンジ、スプリンクラー設備、館内放送設備、非常用エレベーター設備、ヘリコプターホバリングスペースなど多種多様な施設や設備が設けられていますので、一般的修繕工事の工事単価の違いだけではなく、これらの施設や設備の修繕項目を漏らさず長期修繕計画に盛り込むことが重要です。
超高層マンションの修繕工事費は超高層マンション修繕工事の経験のある施工会社や設計事務所に相談することが必要です。
回答者:NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2016年4月号掲載)