3回目の大規模修繕工事では外壁塗装の剥離が必要か?(2017年10月号掲載)
Q
3回目の大規模修繕工事を計画しています。近隣の同経年のマンションで先行して大規模修繕を行った管理組合の方から、3回目の大規模修繕は外壁の塗装を全部剥がさなければならないので工事費がかかると伺いました。
3回目の大規模修繕工事では外壁塗装を全部剥がさなければならないのでしょうか?又その場合工事費はどの位高くなるのでしょうか?
A
外壁の塗装の塗替は、大半は既存の塗装の上に重ね塗りしています。そのため第3回目の大規模修繕時には新築時の塗装の上に2回の大規模修繕時の塗装が塗重ねられ歴代3代の塗装が重ねられています。
大規模修繕毎に塗重ねられた塗装は、一番下層の新築時の塗装の下地コンクリートへの付着力に頼っています。塗装は塗って固まる間に凝集力が働き既存の塗膜を引っ張る力がかかります。よって、新築時の塗装の付着力が低下すると新築時の塗装ごと根こそぎ塗膜がはがれてしまいます。新築時の塗装ばかりではなく過去の塗替え塗装の付着力の低下も剥がれの要因となります。このため、既存塗膜の付着力が低下している場合は、既存塗膜を剥がさなければなりません。
3回目の大規模修繕時に既存塗膜を必ず剥がさなければならないのではなく、既存塗膜の付着力が低下している場合に剥がさなければならないのです。その確認方法は建研式接着力試験器で既存塗膜の付着力の確認を行います。一般的な基準値は外壁塗装など厚塗り塗装では0.7N/平方ミリ以上で、上裏など薄塗り塗装は0.5N/平方ミリ以上あるかを確認します。試験は4センチ×4センチの塗装面を試験器で引張り破断時の強度を確認します。4センチ×4センチの塗装面は外壁の面積に比べるとピンポイントに過ぎませんので、試験箇所は1棟当り塗装の部位別・劣化別・方位別にそれぞれ数箇所以上調査する事が必要です。
付着力が基準値を満たしていても、塗装のふくれや剥がれの状況等も加味し総合的な判断が必要ですので、専門家に劣化調査を行ってもらう事が必要です。
塗膜剥離には工法により差はありますが、2000~2500円/㎡位かかります。又、塗膜を全部剥がすと塗膜に隠れていた下地のコンクリートのひび割れ等が顕著に表れてきますので、下地補修費も嵩んできます。