区分所有者が年金生活者で積立金の値上げは困難(2018年12月号掲載)
Q
築45年になる団地です。10年ぶりに、長期修繕計画の見直しを行いましたが、専有面積当たりの修繕積立金を180円/㎡・月だったのを250円/㎡・月に上げなければ、将来の修繕工事が行えないという結果でした。居住者は8割以上が年金生活者で、この積立金の値上げは困難です。
共用部だけの修繕費ですが、この様な高額な積立金が必要なのでしょうか?又、積立金の値上げを抑える方法は無いのでしょうか?
A
国土交通省が策定した「修繕積立金に関するガイドライン」によると、分譲時から30年間に必要な修繕費を賄うには、延べ床面積10000㎡以上のマンションで平均178円/㎡・月づつ30年間積み立てる必要があるというデータがでています。
これは分譲当初から均等額積み立てた場合です。45年前の分譲当初の修繕積立金は500円/戸・月(専有面積70㎡で7円/㎡・月)程度だったと思われますので、30年後には200円/㎡・月以上に、更に築45年目には250円/㎡・月以上になる可能性は十分にあります。
これは共用部のみの修繕積立金ですので、専有部の修繕費が更に必要になってきます。
修繕積立金の額を抑える方法としてあまり特効薬ありませんが、大規模修繕工事の周期を延伸する方法があります。
10年あるいは12年周期だった大規模修繕工事を15年周期に延伸する事は、大規模修繕を入念に行っていれば可能です。また、修繕仕様を高耐久仕様にすることにより18~20年周期も可能性がありますが、高耐久仕様のコスト高と延伸によるコスト減の比較検討が必要です。
その他には効果の程は微々たるものかも知れませんが、手摺等の金物類は一斉取替をせず補修で延命する、アルミサッシはパーツの取替で延命する、屋根防水は漏水が発生するまで改修しない、公的補助金などがあれば活用するなどが考えられます。
多くの高経年マンションで修繕積立金不足の話が聞こえてきます。分譲マンショのデベロッパーは初期修繕積立金を国土交通省「修繕積立金に関するガイドライン」を参考に適切に設定すること共に、管理組合は早めに策定期間60年位の長期修繕計画を立て、修繕積立金の将来を予測し対策を立てることが必要です。
回答者:NPO日住協協力技術者
一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2018年12月号掲載)