建物相談Q&A いまだ無くならない不適切コンサルタント(2020年12月号掲載)

 大規模修繕工事のため、設計コンサルタントを選定し、劣化調査・修繕設計と進めてきました。修繕設計が終わり施工会社選定に取り掛かった際、設計コンサルタントが一方的に業者選定をすすめ、執拗に特定の業者を選定候補に残そうとする姿勢が見られたため、不審に思い、他の管理組合や業界関係者に相談したところ不適切コンサルタントで評判になっていることが判りました。

 このままこのコンサルタントに業務を委せることははばかられ、解約し他のコンサルタントに残りの業務を依頼したいと思います。業務の中途から施工会社選定支援や工事監理等を引き継いでくれるものでしょうか?

 2016年11月にマンションリフォーム技術協会の会報で「不適切コンサルタント問題への提言」が発表され、工事業者からバックマージンを受け取り管理組合の利益に反した大規模修繕工事を仕切るコンサルタントがいることへの警鐘を鳴らしました。

 これを受け国土交通省が「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」の通知を出し、マンションの大規模修繕工事の発注等に関する相談窓口の活用の促進と、不適切コンサルタントの手口の事例を公表しました。さらにこれを受け、多くのマスコミがこの問題を取り上げました。

 この提言により、不適切コンサルタントの存在が世に知らされ、多くの管理組合で警戒するようになりました。しかし、4年経過した現在も、不適切事例が後を絶たないようです。
ご相談の内容も不適切コンサルタント被害の事例と思われます。この様な状況では速やかに解約し、適切なコンサルタントに再委託することが賢明です。

 そこで、調査から修繕設計まで終わっているので、その後の施工会社選定支援・工事監理を引き継いでもらえるか?ですが、引き継ぐコンサルタントは、前コンサルタントが行った調査をそのまま鵜呑みには出来ませんし、修繕設計内容も大半はお粗末な設計で利用できません。このため、前調査データは参考にはしますが、一部再調査が必要になります。又、修繕設計は1からやり直しになると考えた方が良いと思います。この様になることを前提に引き継ぎ依頼すれば、引き継いでくれるコンサルタントはいると思います。

 この様になる前に、設計コンサルタントの選定は、事前に多くの情報を集め、関連団体等(管理組合支援団体等)に相談し、慎重に行うことが必要です。関連団体などに相談しても、「このコンサルタントは不適切です」などとは答えられませんので、適切なコンサルタントを複数紹介をしてくださいと頼みます。

 又、この様なコンサルタント選定の失敗は、同じ管理組合で繰り返されている事例が多く見られます。その時の理事や委員は自分等の失態と思わず、後々まで引き継がれるように、顛末の記録を残しておくことが、失敗を繰り返さない為の手段です。十数年経つと、以前頼んだコンサルタントである記録は残っているが、不適切であった記録は無く、以前頼んだところだから、又声を掛けようという流れになってしまうからです。

NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二

集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年12月号掲載