建物Q&A コンクリートを削らないとユニットバスに取り替えられない(2021年10月号掲載)
Q
現在タイル張りの浴室(在来工法)です。リフォームで、浴室をユニットバスに取り替えようと計画しています。リフォーム会社の担当の方にユニットバスにする際、管理規約で禁止されているのでコンクリート壁に傷を付けないように依頼しました。ところが、現状浴室の入口が狭いので、入り口ドアの上部と下部及び側面を10㎝位コンクリート壁を削らないとユニットバスを設置出来ない。同じ団地の他の住戸でもコンクリートを削ってユニットバスを納めているとのことでした。
管理組合の担当理事にその旨を話し、コンクリートを削ってもよいかと相談しましたが、「管理規約上コンクリート躯体を損傷してはならない」とあるので認可できないと言われ頓挫しています。うちの団地でのユニットバスの設置はルール遵守下では出来ないのでしょうか?
A
マンションの浴室はおおよそ1985年以前は、コンクリート下地に床防水を施し床や壁にタイルを張った浴室が主流でした。在来工法と言われています。この浴室は経年と共に床防水の改修や排水管や給水管の取り替えが必要になり、どれも床や壁をこわして取り替えるか、防水は既存床に新たな防水層を被せて改修する事になります。
この在来工法の浴室を、工期が短く、新しいデザインで色々な備品が付属したユニットバスに取替えるケースが増えています。ユニットバスは既存浴室の壁の内側にいくつかのパネルを組み立てて規格サイズの大きさの浴室を作ります。この際、浴室内の段差や出入口の開口部周囲のコンクリートを削らないと納まらないケースが多く、お問い合わせの事例のようになってしまいます。
では、このコンクリートは決して削ったり撤去したりしてはならないのでしょうか?コンクリート部分の多くは建物の耐力上必要な構造体や防火区画のための防火壁であることから共用部とし、削ったり、穴を開けたり、壊したりしてはならないとしていますが、在来の浴室周囲の壁がコンクリートなのは、主には内部に防水をしなければならないことと浴室の湿気への耐水性を持たせるためです。尚、間取りによっては構造体である壁や防火壁が浴室周囲に設けている場合もあります。ユニットバスはそれ自体防水性・耐水性があるため、周囲の壁はコンクリートである必要はありません。よって周囲のコンクリート壁が耐震や上階の荷重を支えるための耐力壁や防火区画のための防火壁でなければ、削っても撤去しても建物には問題はありません。ただ、管理規約に禁止が明記されている以上、規約違反となってしまいます。
浴室周囲のコンクリート壁が耐力壁や防火壁でないかを専門家に確認してもらい、どちらでもない壁であれば、リフォームの際の規制を緩和出来る様に規約を改定する事が望まれます。また、床の段差部も洗い場の床タイルの下部数㎝はモルタルでコンクリートではありませんので、モルタル部の撤去は可能です。
ただし、規約を改正しコンクリートを削ったり撤去出来る様になっても、その工事騒音に周囲の居住者の理解を得ることは必須です。
最後に、一部のユニットバスメーカーでは現況の浴室のコンクリートに合わせてセミオーダーでユニットバスを製作してくれるところもあります。
NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二
集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年10月号掲載