建物Q&A 長期修繕計画作成ガイドラインの改訂内容について(2021年12月号掲載)

 来年マンションの長期修繕計画を見直す予定になっています。最近、長期修繕計画作成ガイドラインが改訂されたと耳にしましたが、どの様な改訂なのでしょうか?

 「適切な内容の長期修繕計画の作成及びこれに基づいた修繕積立金の額の設定を促し、マンションの計画修繕工事の適時適切かつ円滑な実施を図ることを目的」として、国土交通省が監修し発行している「長期修繕計画標準様式・作成ガイドライン」が令和3年9月に改訂されています。

 主要な改訂内容は以下のとおりです。

①長期修繕計画の「見直し期間を5年程度」と明記

 長期修繕計画は修繕工事の内容や修繕周期・修繕費が経年と共に変動するので、定期的に見なす必要があります。その見直し期間を5年程度と明記しています。

 改定前は「第2章第1節の2の三 長期修繕計画の精度」では【一定期間ごとに見直す】と書き、「第2章第1節の3の一 管理規約の規定」では【一定期間(5年程度)ごとに見直す】と書き不統一でしたが、今回どちらも【一定期間(5年程度)ごとに見直す】に統一し、5年程度毎の見直しを明確にしています。

②長期修繕計画の計画期間を「30年以上且つ大規模修繕工事が2回含む期間」に改訂(第3章第1節の5 計画期間の設定)

 従来のガイドラインでは、長期修繕計画の計画期間は新築マンションは30年以上とし、既存マンションは25年以上としていましたが、改訂では新築・既存に関係なく計画期間を30年以上かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間としています。

 すなわち、計画期間が30年以上でも、大規模修繕の周期が16年に設定した場合は32年以上の計画期間にしなければ2回以上の大規模修繕工事が含まれません。一方大規模修繕周期が10年でも計画期間は30年以上としなければなりません。

③大規模修繕工事の周期を一般的に12~15年程度とコメント

 ガイドラインの「第3章第1節の5 計画期間の設定」のコメントには、従来、「大規模修繕工事の周期が12年程度です」としていましたが、「大規模修繕工事の周期は一般的に12~15年程度です」に改訂しています。

 実態の修繕周期が12年~15年程度が多いことから実態の即したものと思われます。

 「長期修繕計画標準様式・作成ガイドライン」は、あくまでも参考であり、この様にしなければならないという性格のものではありません。標準様式で統一書式にする事は推奨しますが、修繕項目は各マンションに即したものにする必要があり、修繕周期は各マンションの修繕仕様による耐用年数や立地・建物形状による劣化度合い等により決定することが必要です。

NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年12月号掲載)