建物Q&A マンション修繕業界が大繁忙から大混乱に!(2022年12月号掲載)

 今年9月着工で大規模修繕工事を始めました。予定通りに現場事務所が作られ、監督員も着任し、続いて足場組立の予定でした。ところが1週間経っても足場工事が始まらず、10日目にやっと足場の組立が始まりましたが作業員は少人数ではかどらない状況でした。1ヶ月以上かかり足場が組み上がりましたが、その後も次の工事までに間が空き、連続して工事が実施されません。現在1ヶ月以上工事が遅れています。

 工事発注前のヒアリングで、工事件数が多い今年に工事を依頼し、職人や材料の手配は問題ないかと確認し、問題なしの回答を得て発注したのですが、どういうことなのでしょう?現場監督に確認しても歯切れの悪い回答で、もう少ししたら増員できますという返事でいっこうに拉致が明きません。他の工事でもこのような事が起きているのでしょうか?

 アメニティQ&A2022年4月号で記した通り、マンション修繕業界は大繁忙状態です。

 2020年の新型コロナウィルス感染症蔓延にともない、大規模修繕工事を延期した管理組合が、2021年以降に発注を変更し、そのため年間発注工事量が増加し、元請会社が社内の現場代理人(現場監督)の数だけ目一杯受注しました。ところが、下請の協力業者は複数の元請け会社からの仕事を担当しているため、元受け会社で例年の1.3倍の工事を受けると下請会社には1.3倍×担当元請会社数となり、その受注量に対応できず、予定の時期に工事に掛かれず、また雨天などで工期にズレが発生すると、それに対応できなくなっているようです。

 見積の際、下請協力会社が下請見積を提出してくれたことから、工事受注前のヒアリング時には、職人や材料の手配は問題ないと受け答えしたが、前記の様な下請協力会社の状況を十分把握していなかったと思われます。

 不確定な状況で受注し、工期が延び、遅遅としている状態はマンション居住者は勿論、工事を進めてきた理事・委員にとてもストレスとなり負担になります。状況が判明してきた今は、不確かな状態で受注せず、着工前あるいはヒアリング時に発注者に状況を説明し工事時期をずらしたもらう事が必要です。

NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2022年12月号掲載)