建物Q&A バルコニーの避難はしごの使用訓練はしているのか?(2023年4月号掲載)

 マンションのバルコニーの床に避難はしごが設置されています。しかし避難はしごが付いている住戸は各階2戸づつだけで、すべての住戸に付いているわけではありません。避難はしごのない住戸はどの様に避難するのでしょうか?
 また、避難はしごはハッチの蓋を開けると、金属製の猿はしごが内蔵されており、レバーを引くとそのはしごが下階のバルコニーの床近くまで降りていきます。このはしごを降りてみると前後に揺れ、とても怖い感じでした。時々体験しておかないと、速やかに降りられないと思いました。他のマンションでは避難訓練でこのはしごを下りる訓練もしているのでしょうか?

 避難はしごは、2方向避難の目的のため設けられています。2方向避難とは、共用廊下~階段の避難ルートが火災の炎や煙で通行不可能な場合にバルコニー側から避難出来るようにしたものです。

 バルコニーの戸境パネルを割って避難可能な住戸のバルコニーへ避難出来るようにしていますが、端の住戸は隣りが火元の場合避難先が無くなるため、下階へ避難するための避難はしごが設けられています。

 この避難経路は滅多に使われることはありませんが、いつ使用しなければならないケースが発生するかは判りません。そのために、日常整備を行い、使用方法を体験しておく事が必要です。

 消防署の定期点検で避難はしごの作動状況をチェックされているかと思いますが、はしごを降りる訓練をしているマンションはほとんどないと思われます。はしごを下降させる操作や、そのはしごの降り方は年1回でも体験しておくことが望まれます。また、このはしごを高齢者が使用することはかなり難しいと思います。高齢者でも利用出来る避難器具を避難設備メーカーに開発してもらいたいものです。一部のメーカーで避難袋をはしごの代わりに設けられるようにしていますが、高齢者にどれだけ使いやすいかは不明です。

 又、避難はしごの真下にエアコン室外機をおかないように注意したり、住戸の戸境のパネルが容易に割れるかの検証も必要です。パネルが厚すぎて容易に割れないケースが散見されます。容易に割れるパネルにしておくことが必要です。

NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二

集合住宅管理新聞「アメニティ」2023年4月号掲載