建物Q&A 化粧スレート屋根材の破損が従来より多くなってきた(2023年8月号掲載)

 

 大規模修繕工事でテラスハウス型住棟の傾斜屋根の補修を行いました。

 この屋根は前回の築24年目の大規模修繕工事の直前に、強風で屋根材(カラーベストコロニアルという厚さ5ミリ程度のセメント板)が飛散し葺き替えた屋根です。葺き替えてから十数年目の今回の大規模修繕工事では、屋根材の破損部補修と塗装を計画しました。足場を掛け詳細に調査をすると屋根葺材の破損(ひび割れ・欠損等)が想定以上に多く見つかりました。塗装のため屋根を作業員が歩くとその重みで割れが広がっていく状況でした。

 前回葺き替えた際は屋根材の固定が甘く屋根材が抜け落ちたり、飛散はありましたが、今回ほど屋根材の破損はありませんでした。

 なぜ葺替時より経年数の浅い屋根材の破損が多いのでしょうか?

 カラーベストコロニアル(あるメーカーの商品名)は繊維を混入し強化した化粧セメント板(一般名は化粧スレート)の屋根葺材です。セメント板の強化のために混入していた繊維はアスベスト繊維でした。アスベストの繊維が肺がんや中皮腫という健康への害がある事から、2001年頃から、アスベストの含有量を限りなく減らし、ノンアスベスト建材化してきました。
この対策は健康のためには必須な対策でしたが、アスベスト繊維に変わるひび割れ防止繊維がいまだ開発できず、アスベスト含有建材に比べ割れやすく脆い製品になっています。このため、葺き替え施工中の踏み割れや固定釘上や板金役物の上の屋根材にひび割れが多発するようになったのです。

 建材メーカーも材料の厚みを厚くしたり工夫をしているのですが、従来のアスベスト含有建材に比べると不十分のようです。

 カラーベストコロニアルは経年と共に表面の着色部が退色したり汚れてきますので、大規模修繕時には塗装が望まれます。塗装の際は、屋根材の破損補修を合わせて行うように計画する事が必要です。又、塗装時の踏み割れ防止策(履き物の種類や歩行箇所の制限など)を作業員に周知することが必要です。

 また、この塗装時に屋根材の重なり部分に塗料が流入し固まり、雨漏りの原因にもなりますので、重なり部分に流入した塗料が固まった後にカワスキなで切り込み、縁切りをすることも忘れてはなりません。

NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2023年8月号掲載)