建物Q&A 長期修繕計画の見直しは5年毎に必要か?(2024年2月号掲載)
Q
築20年になるマンションで、5年前に長期修繕計画を見直し改定しています。国交省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、長期修繕計画は5年程度ごとに見直す事が必要とありますが、この5年で見直しが必要な程変動があったのでしょうか?長期修繕計画の見直しも専門家に依頼するので費用が発生します。2~3年見直しを先送りしても問題は無いでしょうか?
A
国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでは長期修繕計画の5年程度ごとの見直しの必要性を以下の不確定事項を含んでいるためとしています。
①建物及び設備の劣化の状況
②社会的環境及び生活様式の変化
③新たな材料、工法等の開発及びそれによる修繕周期、単価等の変動
④修繕積立金の運用益、借入金の金利、物価、消費税率等の変動
これらの事項でこの5年間で大きく変動があったのは③と④です。
昨年(2023年)7月に、あらゆる建材(主に石油を原料とした建材)が原料の高騰や物流コストの上昇で2割前後値上がりし、更に今年は働き方改革実施のタイムリミット(2024年4月)で週休2日制・時間外労働の上限規制を遵守すると人件費の高騰は必至で修繕単価・物価に大きな変動があります。
また、5年前の修繕計画の見直し時に消費税の8%から10%への改定(2019年10月1日)を考慮していなければ、消費税の変動を見直さなければなりません。
これらの状況から、長期修繕計画の見直しは是非今年又は来年くらいに実施し、修繕積立金の再チェックを行う事が必要と思われます。また長期修繕計画の5年毎の見直しには、現行の計画策定期間の更なる5年先の修繕項目を追加し、計画の継続性を図る目的もある事も考慮してください。
NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2024年2月号掲載)