建物Q&A 緊急輸送道路沿いの建築物耐震化は進んでいるのでしょうか?(2024年12月号掲載)
Q
昨今地震が各地で頻発していますが、今住んでいる首都圏での首都直下型地震が起きた場合を色々心配しています。その中で時々耳にする、震災時の救命・消火活動、物資輸送に重要な緊急輸送道路に面する建築物を耐震化を進めているとの事ですが、進んでいるのでしょうか?耐震化率86%とか耐震診断実施率97%とか耐震改修率47%と言う率が錯綜してよく分かりません。何%が耐震化したのでしょうか?
A
緊急輸送道路とは震災時の救急救命・消火活動・物資の輸送などの復旧復興に重要な道路で主要な幹線道路や高速道路を指定しています。その中で特に沿道建築物を耐震化し、倒壊で道路を塞がないようにする必要がある道路を「特定緊急輸送道路」として指定し、都内では高速道路、環状七号線、環状八号線、第一・第二京浜、甲州街道などがそれにあたります。倒壊した建物で道路が塞がれ緊急対応が出来なくなった阪神・淡路大震災の二の舞を演じない為に、「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」を施行し、2012年に緊急輸送道路添いの旧耐震建物(1981年以前建てた建物)の耐震診断を義務づけ、その費用の助成をするようにしています。
この条例施行後、緊急輸送道路添いの旧耐震建物の耐震診断が進み2020年末時点で耐震診断率が97.8%となりました。これは耐震診断を行った率であり耐震建物になった率(耐震化率)ではありません。この条例は耐震診断を義務づけたもので、耐震化を義務づけてはいません(耐震化は努力義務としています)。
条例施行後に緊急輸送道路添いの旧耐震建物で耐震化されたものはその47.7%程度で、元々新耐震で設計された耐震建物と合わせて耐震化率は86.3%となっています。残りの13.7%(約2400棟)は、耐震性が不足し、大地震時には倒壊し緊急輸送道路を塞ぐ可能性があります。道路は1箇所でも塞がれるとその先の目的の場所に到達できなくなります。早急に耐震化率を100%にしてもらいたいものですが、耐震化への費用(助成金の不足分)や耐震補強による建物の使用勝手の悪化、法不適合箇所の適合化、集合住宅での区分所有者の合意形成が出来ないなどの理由で進捗が悪い様です。
NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2024年12月号掲載)